助けて、つらい、誰にもSOSが出せなくて…

そのときの様子を検察官2人が法廷で再現しました。

越前被告役:「私のイライラのおさえがきかなくて。火をつけたら燃え広がった」
警察官役:「何で火をつけたの?」
越前被告役:「新しい犬を飼いたいのに隣の家の人が反対して。放火だから捕まるんでしょ。早く捕まえて」「助けて、つらい、心がつらい。誰にもSOSが出せなくて…」

越前被告は逮捕直後、警察の取り調べに対し、
火をつけた動機について「新しい犬を飼えないことに腹がたった。それで心のバランスが崩れた」と筆談で供述したといいます。

起訴前の精神鑑定で、越前被告は情緒不安定性パーソナリティ障害と診断されました。

パーソナリティ障害とは、人と違う反応や行動をすることで本人が苦しんだり、周囲に苦痛をもたらしたりする場合に診断されます。感情のコントロール、対人関係といった精神機能に偏りが生じるものです。

初公判で弁護側は「パーソナリティ障害に以前から罹患し、感情が不安定で結果を考慮せずに衝動に基づいて行動する傾向が著しい精神状態だった被告は、犬を飼うことに反対されていることが脳裏から離れず、精神的に追い詰められていた」としたうえで、「自宅に火が燃え移る可能性があると認識できない状態のまま火をつけた」と無罪を主張しました。

一方の検察側は、「被告はストレスで、かっとなって火をつけたのにすぎず、火が建物に燃え移る危険性を認識できていた」と主張しました。

筆談で行われる異例の裁判。争点は越前被告が故意で火を付けたかどうかで、判決は3月13日に言い渡されます。