「美希子さんのお母さんが来られました…」漏れ聞こえてくる嗚咽
「あれだけの火事だから、けが人もいる。最悪、この世界にいられなくなった状況になった人もいるのでは」と考えながら、達子さんは会社に向かいました。「自分が生き残って、亡くなった人がいたら、美希子はすごく苦しむだろう」とも思ったといいます。
京都について本社の前に行くと、達子さんたちを待ち構えていたのは、たくさんの報道カメラでした。
▼渡邊達子さん「本社の前に行くと、カメラを抱えた報道の方たちがいました。『すいません』という感じで通り抜けて、閉まっていたドアをトントンとたたきました。」
「『美希子の母と姉です』と言うと、扉を開けてくださって、開いた途端に嗚咽というか、泣いてはるなって分かる声が中から聞こえてきて、開けてくださった方が、『美希子さんのお母さんとお姉さんが来られた』と言った途端にしんっ…って。」
『とりあえず2階で待っててもらえますか』という話で、2階で待ってたんですけど、階下の音も聞こえてきて、警察の方が出入りしているなというのがわかりました。」
「しばらくして、娘とは会える状況ではない、今どこにいるかもわからないというを聞いて、ここにいてもどうしようもないんだと分かったので、美希子が借りていた部屋に行こうと決めました。」
本社から出ると、達子さんたちは報道機関に囲まれました。マイクを向けられ、『どういうご関係ですか』と聞かれたといいます。でも、達子さんたちには、美希子さんがどこにいるのか分かりません。
唯一確認できたのは、今、病院に搬送されている人の中に、美希子さんが含まれていないこと。この時点で、美希子さんが亡くなっているということを悟りました。
▼渡邊達子さん「何もわからない状況で本社から出てきた私と娘に、マイク向けて何か喋るって無茶でしょ。無茶ぶりですよね。仕方がないので、とりあえず報道は置いておいて、会社が手配してくれたホテルに向かいました。」
その後、警察から、DNA鑑定をしたいという申し入れがありました。
▼渡邊達子さん「DNA鑑定してもらったときに、美希子がどこにいるか聞いたんですよね。せめて『あっちの方角に遺体を安置してあります』と言われたら、向こう向いて『もうすぐ会えるから』とできた。じゃあねとか言いながら帰る方が、娘の性格上よかろうと思って思わず聞いたんですけど、『わからない』という返事が返ってきましたよね。」
「冷静になって考えたら言えるわけないですよね、あそこですなんて言ったら、そっちに向かって走っていく方だっておられるかもしれないのに。そんなことを口が裂けても返事できないことをよく聞いたなと。」
そして一週間後、鑑定結果が出たという連絡があり、達子さんは家族4人で、遺体が安置されている場所に向かいました。変わり果てた娘との対面。家族が口にした言葉とは…