見過ごされたSOS 学校・教育委員会「調査に影響が出る、答えは差し控える」

2022年10月、中学校の校長と教育委員会の担当者が自殺した翔さんの自宅に訪ねてきた。亡くなってから7か月、学校側が自宅に入るのは、この日が初めてだ。

校長
「お母さんの悲しみの深さを思いますと、お言葉が出ないのが正直なところ。今回はこうして、まずはお悔やみを申し上げたい」

千栄子さんは、翔さんの相談に対して学校はどう対応したのか教えてほしいと事前に伝えていた。

千栄子さん
「悪口を言われたことを訴えていたが、調査はされましたか?」

校長
「申し訳ないです。答えるのは控えさせてください」

千栄子さん
「なぜですか?」

校長
「調査の方に影響が出るかもしれないので、ここでは控えさせて下さい」

千栄子さん
「亡くなったことをクラスメイトに伝えられずにいた翔君の気持ちは、どのようにお考えですか?」

校長
「申し訳ないですけど、答えを控えさせてください」

千栄子さん
「翔君に対するいじめはあったんでしょうか?」

校長
「申し訳ないですけど、ここで答えるのは控えさせてください」

教育委員会担当者
「我々も調査を受ける立場になる中で、あのときこう言ってましたよね、という話が今後またいろいろ出てくるわけです。個人の判断の中での反射的な答えは、なかなかできづらい状況にあることはご理解ください」

調査に影響が出る、答えは差し控える、同じ言葉を繰り返すだけだった。

翔さんが亡くなった後、千栄子さんが行きたくても行けなかった場所がある。自宅から歩いてわずか5分。翔さんが最期に選んだ場所。翔さんのためにも見ておかなくてはと、決心した。

亡くなる2日前、翔さんは「ママには借りがある」と言って肩をもんでくれたという。千栄子さんの前では最後まで気丈に振舞っていた。

千栄子さん
「こうやって声を出し続けて、自分たちが受けてきた仕打ちとか、絶望してしまった子の存在を世の中に知ってもらって、この子が少しでも報われたらと思う」

1月27日、泉南市は第三者委員会を設置し、ようやく調査を始めた。翔さんの死から10か月が経っていた。