イチローさんも語った「考えなくなっている」
今のメジャーリーグでは試合中のプレーがリアルタイムでデータ化され、それを基にすぐさまプレーを修正できるという。ダルビッシュ投手はいろんな選手を分析するのが大好きなまさに“ベースボールドクター”。メジャーのデータ革命はウェルカムかと思いきや・・・。
川﨑さん:
有くん好みじゃん!たまらんじゃん有くんもう、毎日!
ダルビッシュ投手:
でも、変化球を投げるのとか、球質をよく知るのとかはすごく楽な時代が来ましたよ。
川﨑さん:楽な時代?
ダルビッシュ投手:
だって、どうすればいいか全部わかるから。昔は何でこの人のスライダーこんなに曲がるんだろうとか、なんで杉内(俊哉)さんのチェンジアップはこんなにいいのか、なんで藤川(球児)さんの真っ直ぐはこんな空振りするんだっていうのが昔はよくわからなかったけど、今は具体的に「こうだから」というのが全部データでわかるんですよ。
川﨑さん:
うわー、なんかそれ、言っている意味、わかるような気がする。今の時代だからこそすぐ答えがあるんだね。やっぱり考える時代、そこに向かって行く努力の時間も必要なんだよね。有くんね。
ダルビッシュ投手:
イチローさんが引退会見した時に「考えなくなっている」みたいなことを言ったじゃないですか。
川﨑さん:言いましたね。
ダルビッシュ投手:
そういう事なのかなって最近、思ったりしましたね。

それは2019年、イチローさんの引退会見での事。
イチローさん(引退会見)
「(野球は)頭を使わなきゃできない競技なんですよ。本来は。でもそうじゃなくなってきているのがどうも気持ち悪くて、危機感を持っている人って結構いると思うんですよね」
川﨑さん:
だから考えなくても「こういう打ち方してください」「ここを守ってください」とか、もう勝手に守備位置の事とかもそうだし、イチローさんもよく言われますもんね。「考えなくなってきたから」って。
ダルビッシュ投手:
打球角度は「こうやったらホームランになりますよ」、じゃあ「こういうスイングがいいですよね」っていうのが、みんなそういう風になっていくから。お金とか生活もしていかないといけないというところで。例えば10年前、15年前ぐらいにそんなに変化球投げられなかった投手が、今の時代はみんな投げられるようになってしまう、だから僕はそういう意味ではつまらないんですよ。
川﨑さん:
あー、簡単に投げられてしまうから。
ダルビッシュ投手:
もう、答えが出ている状態。問題集と一緒で答えがあるじゃないですか、わからないでずっと(問題を)解いていくのが昔で、今は答えが横にあって「ああ、こういう感じで、じゃあ式はどうしていこうか」っていうところの話しになっているのであんまり面白くない。
データを生かし自ら“ゲームプラン”を構築
データに頼るあまり、自分で考えなくなってしまう傾向に危機感を持つダルビッシュ投手はある新たな取り組みを始めていた。
川﨑さん:
有くん、今回、2年前から野球ノートをつけているとか。
ダルビッシュ投手:
常につけているわけじゃないですね。特に自分にやることに関してはあまりつけなかったりしますけど、重要なことであったら書いたりとか過去に書いてあるものを見たりします。ただ打者の研究に関してはすごく書いてます。
川﨑さん:
なるほど、だから投手よりも、自分の事よりも打者の傾向とか、この打者の事を書いたりとか、そうやって打者の傾向を調べて自分で対戦するとき組み立てをすることも多いですか?
ダルビッシュ投手:
基本的に選手たちはゲームプラン、スカウティングレポートを作ってもらって、レポートを見て、そこから自分のプランを考えていくんですけど、自分は今年からゲームプランを作る側に回ろうと思って全部自分で作っていましたね。最初から。
どのような配球で、どのように抑えていくかというゲームプランを立てるのは、分析するスタッフや捕手の役目だが、2022年は全て自分で考えていたという。
その基になるノートの中身を少しだけ話してくれた。
ダルビッシュ投手:
打者によっては2ストライクより前はどうとか、あとは2ストライクの後はどうとか、(球速)何マイル以下の球は何年からこれくらいしか打ってないとかとか、そういうのを全部。
川﨑さん:
凄いわ!凄すぎる(笑)有くん、大好きじゃん、そういうの、凝ったら凝りまくるやん!(大笑い)

ダルビッシュ投手:
めっちゃ楽しかった!(笑)
川﨑さん:
アナリストってちゃんといますもんね。データ班がね。その人たちと一緒になって話しながらやっていってる?
ダルビッシュ投手:
向こうは向こうで作ってくれるんですけど、自分は自分で一切、アナリストの話は聞かずに自分で1回作ってお互い答え合わせをする。受け身じゃなくて積極的に情報を取りに行く形。本当にそのゲームプランを作る仕事の人と一緒に競い合うように穴を見つけることでみんなに配るゲームプランも良くなっていくので。