“異次元”のトーンに変化?「金銭給付より意識・社会の変革」

1月23日、通常国会の冒頭に行われた岸田総理の施政方針演説。少子化対策をめぐる言葉にある変化が生じていた。

「従来とは次元の異なる少子化対策を実現したい」(岸田総理)

1月4日の年頭会見で使った「異次元の少子化対策」というフレーズを封印し、「次元の異なる少子化対策」という言葉を使ったのだ。その後の国会の代表質問などでも、岸田総理は主に「次元の異なる」という言い回しを使い続けている。

取材に官邸サイドは一様に「同じ意味で、変化に意味はない」と説明するが、政治家は言葉が命と言われるだけに、フレーズの変化は憶測を呼んだ。

実は年頭に打ち出した「異次元の少子化対策」というフレーズについて、総理周辺では“経済的支援への期待が膨らみすぎている”との警戒感が広がっていた。

実際、施政方針演説の翌日24日、官邸で公明党の山口代表と面会した岸田総理は「次元の異なる」という言葉の説明に力を入れたという。

“次元の異なる”というのは単に金銭給付、経済給付の面で拡大・延長という話ではない、ということを(岸田総理が)強調していらっしゃいました」(公明党・山口代表)

ある政府関係者も、岸田総理にこう同調する。

異次元というのは経済的支援のことよりもむしろ、社会全体で、全ての世代で子どもを育てていきましょう、働き方を変えていきましょう、そういった社会や意識を変えることを言っている」。

さらに、子ども政策のとりまとめに奔走する小倉こども政策担当大臣もTBSのCS番組(1月27日放送)で「次元の異なる」についてこんな解釈を示した。

ベビーカーを押せば舌打ちされる、子供を連れてレストランや電車に乗って行けば白い目で見られる。子供が熱を出して、休もうとすると上司からしかめ面をされる。そういう雰囲気だと、子どもを持ちたいと思わない」「子育て世代や子どもに対してもう1回温かい眼差しを持ち直そうよと、そういう社会機運の醸成みたいなものもしっかりやっていくというのが、“次元の異なる”というキーワードに含まれていると捉えている」

「子育て罰」をなくすには“所得制限撤廃”も

今年「18歳以下の子どもへの月額5000円給付」などを、所得制限なしで打ち出した東京都の小池都知事は、記者から所得制限を設けなかった理由を問われ、こう答えた。

「一生懸命働いて税金を納めて、そういう方々が給付の対象にはならないと、あたかも何か罰を受けてるような…」

「子育て罰」は政治や社会が、子育てをする親や子どもに厳しい状況を批判して使われる言葉だ。“児童手当の所得制限”を「子育て罰」と感じている親は少なくない。
安定的な財源の確保と経済的な支援の充実、そして日本社会の変革。岸田総理がめざす“次元の異なる少子化対策”の実現に向けては、いくつもの難題が立ちはだかっている。