東京都渋谷区のIT企業で週2回、社内報の作成に勤しむ1人の青年がいる。真面目で、分からないところはすぐに質問し、職場の戦力として信頼を得ている彼の名前は吉田祐也(29)。彼にはもう一つの顔がある。陸上・男子マラソンの日本代表選手という顔だ。

2020年、青山学院大学の一員として箱根駅伝に出場し、区間新記録の快走で一気に注目を浴びた吉田。今年2月の別府大分毎日マラソンでは、箱根駅伝で「シン・山の神」として脚光を浴びた6学年下の後輩・黒田朝日(22)と熾烈なデッドヒートを繰り広げた。

2人を指導する原晋監督が解説席から見守る中、レースが動いたのは41km地点。給水のタイミングでアクセルを踏み込んだ吉田が先輩の意地を見せつけ、同門対決を制して日本人トップでフィニッシュ。2時間6分59秒の好記録でアジア大会代表の座を勝ち取った。

今や日本のトップを争うランナーへと成長した吉田だが、実は大学3年まで無名の存在だった。