視点を変えると日常がドラマになる

金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』第9話より

本作は、ミステリーやサスペンス、ラブストーリーや愛憎劇、どのジャンルにも分けられないことが大きな魅力となっている。世を揺るがす大事件や大きな組織が絡むわけでもなく、普通に生活している、いわゆる一般人といっていいキャラクターたちの行動について、考察が盛り上がるというのも、この作品ならではないだろうか。

劇的な出来事がなくても、一人一人の人生にはそれぞれのドラマがある。そのドラマが生まれる基本となるものは「自分以外の人が考えていることは分からない」ということだと土井監督は話す。

「家族でも夫婦でも、どんなに近い人であっても、すべてを理解し合えているわけではありません。言えないこと、言わないことをそれぞれ抱えながら、他者と付き合い、普段の生活を送っている」

たしかに人の心が分かる能力を持つエスパーでもない限り、隣にいる人が何を考えているのか完璧に分かる人はいないのではないだろう。土井監督は、「普段の生活の視点を変えてみると、普通の人生がサスペンスにもミステリーになる」と続ける。

「犯人が誰か、ラスボスが誰かといった事件でなくても、普段の生活で何かが起きたときに、『自分はこの人の何を知っていたんだろう』となりますよね。そんなところからドラマが生まれるということを、今作で改めて感じました」

本作で描かれた二組の幸せな夫婦にも互いに“言わないこと”があり、バス事故をきっかけに、理解していたと思っていた相手の知らない面が明らかになった。そこからドラマが動き出す。

「例えば恋愛ドラマでも、『相手のことをもっと知りたい』『私を分かってほしい』という思いが生まれて、それが物語の始まりになる。ジャンルに関わらず、 “他者とどうやって繋がっていくのか”ということが常にテーマなんだと思います」