街中の公園で相次ぐ倒木や、山中での野生クマの出没被害。一見、別々の話だが、実は「日本人が森と川の手入れを人任せにしてきたこと」という共通の根底が存在する。
東京大学大学院教授で「富士癒しの森研究所」所長を務める蔵治光一郎(くらじ・こういちろう)教授は、「私たちが当たり前だと思ってきた『自然放置』や『森と川をバラバラに扱ってきた縦割り行政』が裏目に出始めた」と警鐘を鳴らす。
蔵治教授に、私たちが直面している「本当の環境危機」について話を聞いた。
「放っておけば木は倒れる」人間が山から“撤退”したツケ
――最近、街中や公園で大きな木が倒れたり折れたりするニュースが増えています。
蔵治教授
「木は本来、どんどん大きくなっていく生き物です。しかし、いずれは寿命が来ますし、病気や虫に侵されたり、風で倒れたりします。木が小さいうちは倒れても被害が出ないためニュースになりませんでしたが、大きくなった木が、何かの原因で倒れて騒ぎになっているのが現状です」
「公園などの管理者が大きくなった木をそのままにしたいのであれば、立ち入り禁止区域を設けるか、倒木のリスクをこまめにチェックするしかありません。『大きな木には潜在的なリスクがある』という認識を、人間側が持たなければならない時代に来ています」
――各地で相次ぐクマなど野生動物による被害も、同じ根っこにあるのでしょうか?
蔵治教授
「野生動物は非常に賢いです。何千年も前から人間と折り合いをつけながら生きてきました。数十年前までは山際で人間が活発に活動していたため、『人間に近づくとロクなことがない』と動物の側が引き下がっていたんです」
「しかし今、人間が都市に集中し、山の手入れや農業をやめてしまい、山際から“撤退”しました。すると動物たちは『昔人間がいたエリアまで進出しても構わないらしい』と学習した。根本的に対抗するには、人間側がある程度、その領域を押し戻さなければ防げません。山に入って手入れをしたり、人の気配をアピールし続けたりしなければ、なめられ続ける一方です」














