“日本らしさ”
知性で戦うとはどんなことなのか。
「ひとつとして、相手のスパイカーのストレート側の手の肘を狙ってのブロックアウト。日本代表(チーム)としては、あのブロックアウトの戦術は完全に共通の狙いとして頭に持っている。肘を狙うのは簡単ではない。一歩間違えたら正面でシャットされる大きな“リスク”もある。でも海外の選手は身体が大きいから、僕たちがまともに彼らのブロックの上からスパイクを打ち落とそうとすることは、物理的にほぼ不可能。だからこそ、ブロックの“外側の腕(右肘)”を上手く壁として使ってコート外へ弾き飛ばしていく。そういう“パワーに高さで勝てない日本らしい、知性を使った戦術”をコートの上で僕らが徹底してやっていると、相手の海外のブロッカーも全然レシーブで拾うことができないので、もの凄く日本のブロックアウトを嫌がってきて、精神的にイライラしてストレスを溜めてくる。相手が僕らのブロックアウトを嫌がって、右手の面をグッとと入れてきたり、よりストレート側にキュッと“寄ってきた”ら、その瞬間に、今度は今度で自分が本来一番得意としている、大好きな“インナークロス”の空いた激しいコースに向かって、思い切り100%の力で勝負していける。そういった“相手のブロックの意識を自分たちの技術でコントロールしてハメていくこと”も大事になってくる」
相手がどう反応するかまで含めて、先の一手まで考える。
「また個人として、あえてブロックの隙間に突っ込んで”吸い込み“を狙いに行くのも、自分の中で感覚として増えている。『あ、ブロックの手とネットの距離が数センチ空いているから、強い球を突っ込んだら絶対に相手の腕の中に吸い込むじゃん!』というシチュエーションが見えている。吸い込みって、狙って100%の確率で毎回打てるような簡単な技ではもちろん無い。でも今シーズンの自分の最大の進化として、自分の腕を振り抜く“スイングスピード”が、劇的に上がっているからこそ確率が高くなっている」
世界屈指のブロッカーにも、選択を迫る。
そして、知性に、身体が追いついてきた。
「去年から今年にかけて、“自分の身体のベスト”を見つけるために色んな細かい調整をしてきました。コンディションの食事管理の調整も徹底してやってきた。体脂肪を極限まで減らして、それに伴って、自分の全体の“体重”を減らしながら、筋量は増えている。去年は跳べていない自分を感じていた。世界と対等に戦うために、自分の身体の仕組みを1から作り直してきた。これが今年の僕の覚悟」
それが、今年のVNLで見え始めた新しい髙橋藍だった。
「空中の打点の通過点に関しては、自分の中でも昨シーズンに比べたら、本当に、全然違う感覚をコートの中でリアルに持っている」
1点を取り切るための知性と身体。
「これまでの自分のスパイクのイメージだと、相手のブロックを避けるためにエンドライン奥へ“長く打つ”イメージ自体は頭の中に強くあった。でも、どうしてもジャンプの出力というか、ボールがネットの上を超える時の“通過点そのものが低かった”。だから、長く打とうとしても、相手のブロックの手に途中で引っかかってシャットアウトされるリスクが常にあった。でも、今年は自分の肉体改造(体脂肪率の極限の絞り込み)が完全にハマって、筋肉のしなりのキレが上がったおかげで、『今年は、コートの奥へ長く打てば打つほど、綺麗にボールがネットの上を通る“通過点”自体も、劇的に高くなっている』という強い感覚がジャンプ中にある。打点自体が海外の壁の上へ完全に上がっているので、相手の強固なフロントのブロックに正面からシャットアウトされる本数が、今シーズンは劇的に減ったことをコートの中で自分が打っていてすごく感じられる。“通過点の高さ”が、今シーズンの自分のオフェンスにおける、“1番大きい最高の手応え”であり、自信に繋がっている」
視界と思考の広がり。
空中での時間の支配。
これが今年の髙橋藍の変化。
「“相手のブロックが完全に2枚、3枚と目の前に綺麗に揃った時の、自分のスパイクの打ち方の質が劇的に良くなった”。たとえ3枚ブロックがドンと目の前に完成していても、そこからの“ブロックの使い方”への引き出しが、自分の中で完全に確立されている。そこは打つ瞬間に迷いが無い」
世界の高さに、真正面から高さで対抗する。
それだけでは、日本は勝てない。
だから髙橋藍は世界の高さを読む。
ブロックの意識を動かす。
その一瞬の隙を突く。
そのすべてを、自分の身体で実行する。
考え抜いて、最後は自分の感性に従う。
髙橋藍の「知性と遊び心」は、まだ世界の壁を越える途中にある。

















