父・健智コーチに見透かされた気持ち

それでも走ることを止めなかった。答えが出ないまま走り続けた理由に、「父が絶対にレースを放棄するっていうのを認めてくれなかった」と父・健智コーチの存在があったと話した。

「練習は継続しながらレースだけ封印するという手はあったと思うんですけど。でも多分父はその自分の勝負事から逃げるっていう精神的な弱さを見ていて。その気持ちがある限りはどんどん勝てない選手になっていって、勝てない選手になればどんどん競技を続けること自体が難しくなっていってっていうような、活動自体が尻すぼみになってしまうところを多分見透かしていて。色々父も理解もしつつも、苦しい厳しさっていうのは見せてたのかなっていうのはすごく思いました。父がそれだけ言うんだったら何かあるんだろうなっていうのもどこかであったりとか、でもその時は分からなかったりとかっていう、すごく色々あって、グダグダ言いながらずっと走ってるみたいな状態だったかなと思います」

走ることは好きでとにかく練習に明け暮れた。約1か月間欧州遠征としてイタリアに行き、その間高地トレーニングなども行った。「久しぶりに1か月間レースから離れて、練習に集中できたからか、久しぶりのレースの時は緊張しましたし、そのレースがうまくいかなかったらすごく悔しかったし腹が立ちました。そのエネルギーを爆発させるために、もっと強くなりたいっていう気持ちも戻ってきたので、それは自分としては喜ばしいことなのかなっていうのは思います」。田中は、調子を取り戻し始めた。

7月に行われた陸上の世界最高峰の大会、ダイヤモンドリーグ(DL)ロンドン大会では女子3000mに出場、8分32秒29をマークし自身が持つ日本記録を1秒23更新した。さらに、8月に行われたDLシレジア大会では女子5000mで、今季日本最高の14分58秒35を記録。

「勝てなかった時期は自分は勝てるんだってことを証明するために頑張ってたと思うんですけど、それが1回勝ってしまったら、何を証明すればいいか分からなくなった。でもそういった迷子になってる時期というか、わからないながらも、わからないからこそ無理やりにでも走ってきたっていう自分を誇りたい気持ちがあるので、今は走り続けてよかったんだよって自分に言える証明のために勝ちたいのかなっていうのは思います」