強酸性と硫黄の成分が農業に役立つことを発見
玉川温泉は、硫黄や硫酸塩などが含まれる温泉でよく見られる「湯の花」が大量に現れることで知られる。湯の花は温泉の成分が結晶化したもので、温泉施設によっては湯の注ぎ口や浴槽の縁などに付着している。また、大分県別府市の明礬温泉のように、採取した湯の花を乾燥させて土産物の入浴剤として販売している温泉地もある。
玉川温泉でも湯の花が採取されているものの、世界的にも珍しい塩酸を主成分とした強酸性のためそのまま使うのが難しく、家庭で入浴剤として使うと湯船が黒ずんだり、傷ついたりする。そのため活用するには加工する必要があり、使われないままの湯の花も大量にあるのが現状だ。
この玉川温泉の湯の花が、農業に役立つことに気づいたのは、秋田県立大曲農業高校の生徒たちだった。
大曲農業高校の果樹部では、湯の花を使った研究を2021年から続けている。今年4月、顧問の佐々木雄生教諭と、前月に卒業した元部員の佐藤美音さんが果樹部の活動を説明してくれた。
最初に研究したのは、田沢湖周辺で盛んなブルーベリー栽培での活用だった。酸性の土を好むブルーベリーの栽培には、ミズゴケなどが堆積し泥炭化したものを乾燥させた、強酸性のピートモス(土壌改良剤)が使われる。しかし、ピートモスが高価であることが農家にとっての課題だったと佐々木教諭が説明する。
「多くの作物はアルカリ性を好むのですが、ブルーベリーは酸性を好みます。ピートモスは99%がカナダ産で高価なので、強酸性の湯の花で代替できないかと考えたのです。県立農業科学館の畑で、湯の花を溶かした水を土にかけてみたところ、ブルーベリーは通常より果実が大きくなるなどよく育ちました。湯の花は無料でコストがかからないので、農家の皆さんに喜んでもらっています」
さらに、湯の花の意外な効果もわかってきた。湯の花の硫黄の匂いを、イタチなどの小動物やカラス、虫などが嫌うことを農家から聞き、湯の花や温泉水を入れたペットボトルなどをリンゴの実のそばに吊るしたのだ。佐藤さんはその効果を見た時に、手応えを感じたと話す。
「果樹にとっての敵にカメムシがいます。カメムシは果汁を吸うので、リンゴは傷だらけでボコボコした形になってしまいます。それが湯の花を吊るすと、カメムシが周辺で死んでいるのが確認できて、本当に効くことがわかりました」
カメムシ以外に小動物やカラスによる食害にも対応できるようにと、果樹部では「湯の花キット」を開発した。湯の花を希釈した温泉水を、葉の形に切り抜いた牛乳パックに染み込ませてシートに包んだものだ。このキットは2022年の「イオン エコワングランプリ」で内閣総理大臣賞を受賞した。














