――自公の関係を思い返してみると参院選挙の相互推薦でまとまらなかった記憶があります
もともと選挙の時には自公それぞれが推薦することをスムーズにやっていきます。本来でしたら参院選の場合は前の年の暮れまでには行うのですがそれがうまくいきませんでした。3月の自民党大会直前までずれ込みました。それと同じように今回も、すり合わせが出来ていなくて、本当にやるんだろうか?私たちも補正を組みますと宣言しても、実際の補正は選挙終わってからではないかとみていましたが、今回も公明党に押し切られてしまったということなんですね。自民党幹部の一人は“国民民主党が自民に近寄ってきているから公明は余計頑なになっているのではないか”と言っています。トリガー条項の時に国民民主党が自民党に3党協議がありました。政策的にすり寄っている。それに対しての警戒感が公明党にあることが一つと、自公の調整があまりうまくいっていないことを幹部は暗に認めています。
――なぜ調整がうまくいかないのか?
いま執行部間が自民党も公明党も幹部同士が腹を割って話す機会とか水面下で交渉できていないということを感じるところがあります。政治ですので相性とかそれぞれの考え方が反映されますからその“チグハグ感”が出たのかなという印象があります。
――自民党にとって公明党はパートナー。この隙間風的なものはどういう影響を及ぼすか?
当面は選挙の協力、どれくらい今まで通り票の協力関係ができるかそこが試される。ただ今回、参院選挙、野党の方が多極化して立憲民主その他の政党が分裂しています。野党が一体で戦うかどうかもまだわからない部分がありますから、自公はそういった状況から救われているというところはあります。
――野党は細分化されてまとまりが見えない状況があり、自民党は割と強気なのか?
多少楽観視しているところは今もあると思う。3回の負けた時のようなシリアスな状況ではないと思いますが、選挙はやってみなければわからないのと自公がどうも隙間風というか不協和音に近いものが出始めていますから、その部分が選挙に向けて何らかの穴というか崩れるところになってくるところになってくるというところはあります。
――今回の補正予算を含めた経済対策はどういった内容になるのでしょうか?
政府は22日、自民党に物価高対策について示しました。原油高対策が中心です。石油元売りへの補助金の拡充でいままで1リットルあたり25円であった補助金の上限を35円に引き上げます。またこれまでガソリンの小売価格の全国平均が172円を超えた部分を抑えて行こうという設定だったがこの基準価格を168円に引き下げます。これで価格を引き下げることを目指します。その他にも、所得が低い世帯への補助も盛り込まれています。注目したいのが補助金の支給は「9月末までに限る」ことが明記されています。臨時国会を開いて第二次の補正も考えているのだと思いますが、9月末という期限は参院選をしのぎたいという政府与党の本音がうかがえます。
――原油高による物価の高騰ということもあります。
非常に難しいのは今回の対策は原油高をどうするかに力点が置かれていますが、もう一つの不安要因“円安”があります。円安は国際的な要因でしてきょうもアメリカの方で利上げの動きが報じられたと思うが、そういった日米の金利差とかいろいろな要因があると思いますが、根本の問題はいまマーケットで円が魅力的な通貨ではなくなってきている。そういう危機感があると思います。
――円がどうして信頼されていないと?
円を買いたいという、円で投資したい円を購入したいという購買意欲がなくなってきているから中長期の話になってしまいますが、岸田総理、選挙でどういった通貨対策、円安に対処していくのか問われる難しい課題になると思います。
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後藤俊広
TBSテレビ 報道局政治部長
小泉純一郎内閣時から政治報道に携わる。郵政民営化を巡る自民党の小泉VS民営化反対派の闘いや自民→民主、民主→自民の2度の政権交代などを現場記者として取材する。趣味はプロ野球観戦で中日ドラゴンズの落合博満元監督を取り上げた「嫌われた監督」が座右の書
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