立憲と維新の分断もくろむ自民・茂木幹事長

立憲と維新が共闘継続を合意した、まさにその日の1月18日、万博会場予定地には自民・茂木幹事長の姿があった。視察には大阪の松井市長、吉村知事も同行し、茂木氏は「国、地元自治体、万博協会、企業一体になって機運を盛り上げていく」と、リップサービスを忘れなかった。その上でさらに「立憲と維新の方が国家観が問われる問題については、若干隔たりがあるのかなと見える部分もある」と、立憲と維新の共闘継続をけん制した。


さらに立憲幹部が大阪を視察した20日の夜、茂木幹事長自らの呼びかけで、都内の高級中華料理店で維新幹部と食事を共にした。紹興酒を飲みながらの「ただの雑談」だったということだが、茂木氏の、立憲と維新の分断をはかろうとする意図は明らかだ。

去年の臨時国会では、立憲と維新による突然の共闘で与党の国会対策は困難を極めた。閣僚3人が次々に辞職へと追い込まれ、国会日程が窮屈になる中、旧統一教会の被害者救済法案の修正など、終始、野党ペースで進められた。こうした事態を打開するため、動き出したのが茂木幹事長だ。茂木氏は「安住氏はずるい。立憲を一人旅(=孤立)させる」と息巻き、維新との関係強化に舵を切った。

ただ、茂木氏はもともと維新との関係を重視していたようには見えない。去年5月には茂木氏が、「身を切る改革ではなく、身内に甘い政党」と維新を批判し、当時、維新の代表だった大阪市の松井市長が「薄っぺらい幹事長」と応酬する一幕もあった。

その茂木氏が維新への接近を図ったのは、去年11月以降、旧統一教会をめぐる救済法案の協議を通じてだったという。それ以降も連絡を取り合い、今年に入ってからは、幹部同士の会談も行い、通常国会で憲法改正などについて協力して議論を進めることで合意した。

「(日本維新の会と)より幅広いテーマについて、協力を進めていきたい(自民・茂木幹事長)」

「“二股”かけたらしっぺ返しくらうのは世の常」


自民からのアプローチに維新は手放しで喜んでいるわけでもない。
万博の成功には政府・与党の協力が不可欠だが、維新の幹部は茂木氏の接近について「我々の足元を見ている」と、警戒を隠さない。維新がこだわる旧文通費の改革についても、通常国会で「議論する」ということで自民・維新は合意したが、満足するものとはなっていないという。

一方で維新は、立憲との共闘継続にも前のめりではない。立憲からの秋波を感じつつ、自民とも関係を構築する。そうすることで双方から譲歩を引き出せる上、キャスティングボートを握る可能性もあるからだ。それは、自民、立憲の双方を万博会場の視察に誘ったことからもうかがえる。維新幹部はここでも 好き好んで使う“是々非々”という言葉を使った。

こうした維新の姿勢を、立憲の中堅議員はこう評した。

「要するに二股かけてるんだろ?そんなのしっぺ返しくらうのが世の常だろ」


TBS政治部野党キャップ 新田晃一