収容されたとしても人としての尊厳を守る「マンデラ・ルール」
大阪高裁判決で注目されるのは、手錠の使用が違法かどうかを判断するにあたり、「マンデラ・ルール」(国連被拘禁者処遇最低基準規則)を踏まえている点だ。
国際人権法が専門の明治学院大・阿部浩己教授によると、「マンデラ・ルール」とは受刑者の処遇に関する最低限の国際基準を定めたもので国連総会(2015年)で採択された。「収容された人であっても管理の対象ではなく、人としての尊厳を大切にすることが大原則で、世界中どこにいても、この基準を外してはいけないとの考え方に立つ」という。
南アフリカで27年間投獄されながらも、反アパルトヘイト(人種隔離政策)運動指導者として人権の大切さを訴え続け、後に大統領になったネルソン・マンデラ氏の功績に敬意を表して名付けられた。
フジイさんの弁護団は、1審段階から「マンデラ・ルール」のほか、日本にとっても法的拘束力がある国際人権条約「自由権規約」や「拷問等禁止条約」をもとに入管職員の行為の違法性を主張した。しかし、1審判決はこの主張をまったく顧みなかった。
一方、大阪高裁は、判決で「マンデラ・ルール」を引用して、拘束具の使用にあたっては、身体拘束された人が「自分や他人を傷つけ、または財産に損害を与えることを防ぐため、他の方法がない場合に、施設長の命令によって」実施されるなど限定された状況を挙げるとともに、使用が認められる場合の3つの原則をはっきり示した。
(a)拘束具は、制限されない動きによって生じる危険に対処する、より制限的でない制御形態では効果がない場合にのみ用いられるものとする。
(b)拘束の方法は、生じている危険の程度および性格に基づいて、被拘禁者の動きを制御するために必要かつ合理的に利用可能な、最も侵襲性の低い形態でなければならない。
(c)拘束具は、必要な時間のみに用いられ、かつ制限されない動きによって生じる危険がもはや存在しなくなった後には、できる限り速やかに取り外さなければならない。
硬い言い回しだが、要するに、拘束具が認められるのは、それ以外の方法では収容された人の危険な動きを防ぐのに効果がない場合のみで、その方法は必要かつ合理的で最も体に負担をかけない形でなければいけない。拘束は必要な時間のみで、危険な動きがなくなれば、できる限りすぐに外さなければならない。
そのうえで大阪高裁判決は、「『マンデラ・ルール』は批准、発効した条約ではなく法的拘束力を有しないが、各国の行刑立法(注・刑務所や拘置所などの刑事施設における受刑者や未決拘禁者の処遇、管理などについて定める法律の制定)および実務運営にあたって指導理念として尊重され、努力すべき国際的な基準として広く認められてきた」と指摘。「拘束具の使用に関して厳格な定めを置いて被拘禁者の人権を可及的に(できる限り)保障しようとした趣旨は尊重されなければならず、本件もそのような観点を踏まえて判断する」と「マンデラ・ルール」を基準に据えた。

これを受けてフジイさんに対する拘束がどうだったのかの検討に入り、2回目の“後ろ手錠”のうち、「自傷他害のおそれが相当程度低減していた20日午後11時頃以降(の13時間)は、“後ろ手錠”によらなければ制止することが困難だったとは言えないし、さらに継続することが必要最小限度の範囲内にとどまるとは言えない」と認定、“後ろ手錠”の使用継続は違法と判断した。

















