生成AIの実力発揮シーン

ドラマや映画での生成AI活用は今後ますます進んでいくと思われるが、生成AIがその実力を発揮するのは、やはり「爆発シーン」や、従来「マットペイント」と呼ばれる技法で作られていたシーンが中心となりそうだ。

「マットペイント」とは、実写映像にデジタルやアナログの絵画技術で製作した背景画を合成させ、すべてが実写のようにみせる技法のこと。「スター・ウォーズ」をはじめSF作品などには欠かせないものだ。

「マットペイント」を使うシーンの場合、ある程度の部分の実写撮影が必要となるが、これに生成AIを用いると、写真があれば同じようなシーンが出来てしまうという。TBSアクトの小嶋さんは改めてこう語る。

「コストダウンになります。だいぶ違いますね。マットペイントのために最低必要な実写素材を撮りに行くとなれば、カメラマンや照明も入れて行かなければいけなかったのが、AIを使うなら行かなくてよくなって、そこのスタッフの人件費が削減できてしまいます」

また、イノベーション推進部の宮崎部長も、生成AIを使うメリットについてこう強調する。

「生成AIで簡単にできるようになることで、もっとお金をかけなきゃいけないんだけど諦めていたところにお金をかけられるようになって、より“質”を上げることにもつながります」

導入決定から半年余り “プロ”のこだわり

ところで、今回の取材を通じて一番驚いたのは、TBSアクトの2人が生成AIツールを利用する環境を得てから、まだ半年余りしか経っていないということだ。

大村さんは、生成AIツールと日々格闘する中で、少しでも得られる映像の品質をあげるため、ある工夫にたどりついたという。

実は「Veo3」は日本語でのプロンプト指示が可能で、それが導入理由のひとつだったが、大村さんは今では英語による指示にこだわっていると話す。

「僕がもう意地でも英語でやってるのは、『Veo3』にかかる余分な計算力を減らすためなんですよ。『Veo3』は最終的に英語で考えるので、日本語で指示するとそこから英語に翻訳する時にどれくらいパワーを使ってるのか、わからないので」

そして生成AIのポテンシャルは認めつつ、こうも釘を刺す。

「AIがすべてやってくれたら楽なんですけどね。大事なのは、『AIではそこまでは難しい』という限界ラインを見極められることなんです。そして『AIがここまでやってくれるのなら、あとはじゃあ自分でやっちゃおう』という技術があるから品質を担保できるんですけれど、その技術がない人はAIで全部やり切らないといけないから、そうなってくると逆に時間もコストもかかると思います」

生成AIツールにも当然使った分だけの課金があり、“ガチャ”頼みでいたずらに出力を繰り返せば、逆にコスト高につながる可能性もある。「VFXのプロ」ならではの、言葉の重みがある。