溺れている人に一瞬だけ空気を吸わせて水に沈ませる

こうした中、入管当局はハンストで体調を崩した人を2週間だけ仮放免して、再び期限を定めない収容に戻す対応を始めた。これは多くの人を苦しめ「水中で溺れている人に一瞬だけ空気を吸わせて、また水に沈ませる」と批判された。

サファリさんの2回目の入管収容は合計1357日に上り、その間に「2週間仮放免」が3回あった。次第に食べても吐くようになり、うつ病と診断された。

再びサファリさんの法廷発言に耳を傾けたい。

「2週間だけ仮放免されて、また無期限収容されることを3回繰り返されました。これはもう人間相手にできることではない。入管におもちゃのように扱われていると思いました。私はうつ病になりました。うつ病というのはとてもつらい。夜、眠れなくなりました。ずっと締め付けられているような気持ちになりました。いつも強い恐怖が頭から離れなくなりました。無意識に頭を壁に打ち付けたり、朝起きると、両方の腕に(言葉に詰まりながら…)傷が付いた跡がありました。手が真っ赤に腫れていました」

2019年10月、サファリさんらは国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会に「個人通報」を申し立て、極めて長期の収容と短期2週間の仮放免、再収容が恣意的に繰り返されていると訴えた。

作業部会は2020年9月、「2人に対する身体の自由のはく奪は『世界人権宣言』『自由権規約』に違反して恣意的である」と結論づける「意見」を公表した。この中で作業部会は「裁判所の審査なしに収容が認められ、理由も、期間も告げられていない。収容は、必要性を個別に評価したうえでの最終手段だが、代替手段を検討したこともない。事実上、日本の入管法は無期限収容を許すもので恣意的だ」と指摘した。

根拠となった「自由権規約」は第2次世界大戦中に起きた大量虐殺などの人権侵害や抑圧を教訓に、国連が1948年に採択した「世界人権宣言」を条約にしたものだ。日本は1979年に批准している。憲法で「日本国が締結した条約及び国際法規は、これを誠実に遵守することを必要」(98条)とし、国内法である入管法より上位に置かれる規範になる。

ところが、日本政府は異議を申し立てた。2人は2022年1月、東京地裁に提訴した。