■次の総裁の宿題は「正常化」

ーー次期総裁に残された宿題は?
後始末、やはり正常化です。今までやってきた政策の効果はあまり見られませんでしたが、副作用がいっぱいあります。最近で言うと円安、あるいはマイナス金利などによって金融機関の収益をかなり圧迫してしまったという面もあります。日銀が買い入れている資産、例えば国債などは既に含み損が出てるとか、株式をかなり買っているので将来株価が下がったらそこで損失がかなり出る可能性があるとか、そういった色々な問題が既に起こっているので、できるだけ副作用を下げていくような正常化が必要だと。それが次の総裁の一番の役割だと思いますし、政府も多分それを望んでるんだと思います。
■取り沙汰される2人の候補は「対照的」
ーー総裁候補として名前が挙がっている雨宮副総裁と中曽前副総裁、どんな印象をお持ちですか?
雨宮さんは金融政策をずっとやってきた金融政策の専門家です。一方で、中曽前副総裁は、市場と金融機関の経営の安定性とか金融システムの安定性などを専門にやってきた、90年代の終わり頃の日本の金融不安のときにもいろいろ活躍した人。金融政策ではなく、金融市場・金融機関の専門家です。
日銀法にある目標は2つあって、1つ目の「物価の安定」はある意味金融政策で達成するもの。2つ目は「信用秩序の維持」。「信用秩序の維持」というのは「金融システムの安定」なので、実はその日銀の2つの大きな使命をそれぞれ担う役割を果たしてきた、ちょっと対照的な2人です。
雨宮さんはどちらかというと国内派なんですけども、中曾さんは国際派。特に中央銀行とか海外の金融規制当局とのネットワークがすごくある。
■カギは「政権の期待」「黒田総裁との距離感」

ーーどちらが今の日銀にふさわしいと思うか?
2人は対照的なので、まずは政権が何を期待するかです。金融政策で何か期待するのか。もし来年景気が悪くなって世界的にまた金融が不安定になれば金融市場の安定を巡って、各国の中央銀行とちゃんと連携してやって欲しいっていうことになれば中曽さんの方が適任ということになります。来年の4月なのであとわずかですけども、ここからの経済とか金融の情勢次第でもまだ人選が変わってくる可能性があるのかなと。
黒田さんに近い人かどうかも選択肢としてはある。金融政策に柔軟性がなくなり、硬直的な金融政策が色々な問題を生んでいます。その硬直性を生んでいるのはおそらく黒田総裁だろうと。実際の金融政策は総裁だけが全て決めるわけではないんですが、今年に入ってから金利の上昇を許さない姿勢は黒田総裁が主導してるんじゃないかと思います。それに対する批判も世の中に出てきたので、もし黒田さんに近い人を総裁に指名したら、今の政策を継続するというメッセージになってしまう。それでもいいと思えば、今一緒にいる雨宮さん。多少なりとも変えたい、黒田さんの政策じゃないんだというメッセージを送るんであれば、今執行部にいない人を総裁にするということなので中曽さんやその他の人ということになります。黒田さんとの近さも人選の大きな判断材料だと思います。
(TBSテレビ 報道局経済部 出野陽佳)