消費税対策だけに使うのか、それとも?
そして、何より重要なのは、給付付き税額控除の対象を、消費税対策だけに限定するのか、という点です。食料品の消費税ゼロをやめる際の対策だけであれば、一定以下の所得層に対し、1年分の食料品8%に相当する額、例えば3万円なら3万円を控除すれば良いので、システムができれば、さして難しい話ではありません。
しかし、そもそも国民会議まで作るのは、税と社会保障の一体改革を根本的に議論するためでした。バラバラに設計されて複雑化した社会保障、つまり「給付」と、税金(国と地方)と社会保険料に別々になっている「負担」を、いわば「見える化」して、より効率的で公平な制度に改革するという大きな目的があったからです。
高市総理もかねて、社会保険料が重くなっている中低所得者への支援策として、給付付き税額控除を導入したいという心情を語っています。同じく与党である維新も社会保険料引き下げを目指しています。消費税対策以外にも対象を広げるとなると議論難航は必至で、とても数か月でコンセンサスなど形成できそうにありません。
給付付き税額控除は海外で実施済み
給付付き税額控除は、すでに海外では導入されています。アメリカでは、勤労税額控除という基本部分に、配偶者の有無や、子供の数による児童税額控除が加味される仕組みです。
イギリスでは、ユニバーサルクレジットという名称で、勤労税額控除や児童控除だけでなく、住宅手当、求職者給付、雇用支援給付など6つの給付が統合されています。ベーシックインカム=基本生活保障制度を志向しているようにも見えますが、イギリスも、アメリカも、就労促進が制度の発想の根本にあり、就労や就労努力をしなければ、減額される制度設計になっていることは、注目に値します。
要は、給付付き税額控除は、数多くの税金にかかる控除や社会保障給付などを一本化して、透明化、効率化するところに、制度としての醍醐味があるのです。その意味では、様々な制度がパッチワーク的に積み上がっている今の日本では、児童手当などの子育て支援、失業手当や就業支援、さらには税金にかかる各種控除など、相当な減税や給付を取り込める可能性があるものと言えるでしょう。逆に、消費税対策のように1つの目的だけに使うのであれば、一定の所得層に給付金を配った方が早いという話にもなります。
もちろん、数ある複雑な制度をいっぺんに新たな「給付付き税額控除」にまとめ込むことは不可能です。しかし、スタート時点で、何のためにこの制度を新たに作るのかを明確にしておかなければ、議論は迷走しかねません。「食料品の消費税ゼロ」を急ぐ政治的な事情があるにしても、国民の負担と給付のあり方をしっかりと議論することの方が、むしろ大事なのではないでしょうか。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)














