■総務省からの勧告

いじめの正確な認知が不十分であることは、「いじめ防止対策推進法」制定後も重大事案が後を絶たないことなどから、総務省が文科省に勧告した際にも指摘されていた。

総務省が60教育委員会を調査したところ、「学校間で認知件数の格差がある」と8割近く(46教育委員会・77%)が回答。法の定義とは関係ない「継続性」や「集団性」といった要素で、勝手に限定して解釈したケースも少なくなかった。「数名から下着を下げられてひどく傷ついた」と相談されたのに、“単発行為で継続性がない”として認知しなかった例もあった。

こうした限定解釈による見逃しが、自殺や長期の不登校などの「重大事態」へのエスカレートにも繋がってしまう。総務省が「重大事態」の66事案も検証すると、その多くは「冷やかし・からかい等」から発展したものだった。

66の重大事案の半数以上で(37事案・56%)、いじめの認知等に係る課題があった。やはり、いじめの定義を限定して捉え、“悪ふざけ”や“じゃれあい”で問題ないと軽視したケースや、被害者本人が「大丈夫」と言ったので“いじめではない”と判断したケースもあった。初期の対応に問題があり、いじめ対応のスタートに立てなかったことが、重大事態を招いていた。

森田:
今の法律の定義での「いじめ」を積極的に認知して欲しい。特にアンケートで直接「いじめ」となってなくても、子どもが「イヤな思い」とか「苦痛」を感じていたら、いじめとして認知、カウントしてください。それほどスタートの気づきは非常に重要なんです。

■認知した全てに対応を

森田は、「いじめと疑われるもの全てへの対応」を求め、「絶対に徹底してほしい」と訴えていた。「いじめ防止対策推進法」の23条にも、「いじめの事実がある時」ではなく、「いじめの事実があると思われる時」に学校に通報する、とある。通報義務が課される。いじめが疑われたら組織で情報を共有して対応してほしい、ということだ。

▼「いじめ防止対策推進法」
(いじめに対する措置)
第二十三条 学校の教職員、地方公共団体の職員その他の児童等からの相談に応じる者及び児童等の保護者は、児童等からいじめに係る相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、いじめを受けたと思われる児童等が在籍する学校への通報その他の適切な措置をとるものとする。

森田によれば、よく学校現場であるのは、管理職が担任に「事実確認もしないのか? それはいじめと違うぞ」と言い切って終わってしまうケースだ。しかし個々の教職員の判断にゆだねるのはダメで、その場だけで判断してはならないと警告した。


(森田の講演スライドより)

森田:
事実は分からなくても、虐待事案のように、まずは児童相談所へ通報を、ということです。そしたらそこで事実確認をする。先生も保護者もそうする。おかしいぞ、となったら通報する。「本当かな? 事実じゃなかったら迷惑かけるな…」とか考えない! 「先生、あんなことがあったんや」と情報があれば、それをきちんと報告し、組織で事実確認をする。その体制をとるのが大事なんです。