■これまでと違ういじめ対応を

森田は、「これまでと違ういじめ対応を!」と言っていた。これまでは、いじめの事実をまず確定し、それに基づいて対応しましょう、というパターンだったが、それをガラッと変える。今の法律が求めているのは、まず子どもが訴えてきた苦痛や状況に向き合うこと。状況に迅速、適切に対応しながら、事実を確定していく。

その初動がないと保護者や児童の苦しみが深まり、解決困難な事態に発展する恐れがある。今までのパターンだと、保護者からクレームが来てしまう。

「保護者からのクレームが多い」と嘆いていたある学校に、森田が「それなら初動対応を洗い直してみ」とアドバイスしたところ、やはりそこに課題があった。

森田:
事実確認してから、ではないんです。子どもが「しんどい」と言ったら、すぐその場で、すぐ集まって状況を聞くとか、対応していく。それが初動体制なんです。
初動体制は、大事ですよ。学校と保護者、お互いの不幸を避けるためです。「助けて」となったら、まず応える。起こった状況が必ずあるのですから。いじめであろうがなかろうがね。子どもたちの学校環境を良くするために、軽重を問わずやる。

(いじめ予防授業)

■いじめは見えにくい

いじめは見えにくい現象だ。だから、「いじめだ」、「いや違う」という認知のズレから、往々にして悲劇が始まる。この認知のズレをなくすためにも、学校内の体制を組む。ちょっとした兆しを汲み上げて、みんなで共有して対応していく。いじめへの関心と、見ようとする意欲、問題意識をどう奮い立たせていくかが非常に大事で、森田に言わせれば、「いじめは“見ようとしなければ見えない”現象」なのだ。

森田:
先生方に見えるのは 軽いものとか、遊びかどうか判断がつかない疑わしいものです。それをその場で「どうでもいいや」と判断しないで、「あれっ?」と感じる。これを組織へ汲み上げて「ちょっとみんなで見ていきましょう。フォローしましょうよ」と情報を共有していきます。そして多くの先生方がご覧になって、いじめかどうかが判断できます。

軽微なものは往々にして先生方はその場で「大丈夫」とか「よくある。これぐらいのこと」と即断されるケースや、少し注意されるだけで終わるケースがあります。

しかし、軽微なものも過小評価せず、大袈裟にとらえてください。事実を調べていったら、重大事案が含まれているかもしれません。先生方に見えるものは、ほんの氷山の一角であると思ってください。漏れなく重大事案を汲み上げるために、軽微なものを過小評価しない必要があります。

執筆者:TBSテレビ「news23」編集長 川上敬二郎