総理の「専権事項」という言説の問題

解散をめぐっては「総理の専権事項」という言葉がしばしば使われます。しかし、この表現自体に大きな問題があると高安教授は指摘します。

「憲法上は解散権は7条解散(天皇の国事行為としての解散)と69条の不信任案可決・信任案否決に合わせて行われるもので、主体は内閣なのです」と説明します。つまり、「首相が判断して良いというのは、内閣の中でそういう慣行が確立しているのであればそういう言い方もできるかもしれないが、それが出来上がっているとは思えない」(高安教授)

岩田部長も「政治関係者も含めて『解散は総理の専権事項だから』という言葉が頻用され、総理の一存でやればいいという認識になりすぎているきらいがあるのではないか」と懸念を示します。憲法7条には「天皇は、内閣の助言と承認により」衆議院を解散するとあり、内閣の助言と承認が必要なのです。

小選挙区制度の導入により公認権を持つ総理・総裁の力が強くなり、内閣の一員や自民党幹部が総理の意向に異論を唱えることは非常に困難になっています。「次の選挙で自分がその党から出られなくなる可能性がある」(岩田部長)からです。野党側からは「与党が有利な時に解散する仕組みがいいのかどうか、そろそろ考えないといけない」という意見も出ています。

選挙日程の短さと国民生活への影響

仮に通常国会の冒頭解散をした場合、解散から投票日までの期間は最短で16日と、戦後でも極めて短い日程になる見込みです。

こうした短期間での選挙には大きな問題があるともこれまでも指摘されてきました。「急に選挙が来る上に考える時間、準備をする時間を与えないという形の選挙。相手に準備をさせない、選ぶ側に準備をさせないということ」(高安教授)なのです。

さらに冬の厳寒期の選挙には様々な懸念の声が上がっています。ラジオのリスナーからは「雪の多い地域での投票率が低くなることも狙っている可能性はないか」「2月上旬に受験を控えた方々に不利益しか生み出さない」といった意見が寄せられました。

岩田部長も「選挙活動自体、候補者も大変だが、有権者も大変。街頭演説を聞きに行くにも寒い中でやらなければならない。受験生がいる家庭では対応も大変だし、18歳の受験生自身も選挙権を有しており、野党側は批判している」と指摘します。