「どこへ向かっているのか誰にも分からない」

アメリカの著名政治学者イアン・ブレマー氏が率いるユーラシア・グループはトランプ氏が進める国内秩序の解体を「米国の政治革命」と評し、1月5日に発表した「2026年の世界10大リスク」の中で最も大きなものとして挙げた。「アメリカは暴走しているが、どこに向かっているかは誰にも分からない」とも指摘している。

筆者もこのところ、「どこに向かっているかは誰にも分からない」というのがトランプ政権の特質だとますます強く考えるようになっている。

トランプ政権は国内外を問わず既存の秩序を否定し、破壊しているが、「その先」の秩序が具体的にどのようなものになるのか、提示できていない。

不法移民を徹底的に排斥したら、誰がゴミの収集やホテルの清掃、飲食店のウェイターといった仕事を行うのか。製造業は「海外ではなく、アメリカで作る」というが、iPhoneをアメリカ国内生産にしたら、1台いったいいくらになるのか。

ベネズエラでは、マドゥロ政権の高官を重用している。旧体制の温存に加担しているのに、なぜ「将来的には民主的な政権移行」ができると考えるのか。

国際問題からアメリカ人の日常生活に至るまで、先行きの展望に乏しい課題は枚挙にいとまがない。

ただ、ユーラシア・グループは、少なくともアメリカの過半数の有権者はこうした状況を以前より「マシ」だと考えていると喝破する。

「有権者の過半数にとって、不確実な革命のリスクの方が、自分たちのために機能していなかったシステムの下での確実な衰退継続よりましなのである」

さらに、「トランプが政権に戻る前から、米国の政治システムは構造的な機能不全に陥っていた。彼はその機能不全の症状・受益者・加速装置だが、原因ではない。そして、彼がそれを修復することもない。トランプの革命が成功しようが失敗しようが、米国が以前の状態に戻ることはない」と指摘する。

アメリカ、そして世界の新たな均衡点はどこにあるのか。トランプ政権はその答えを持たないまま、2026年も「革命」を続けていく。

〈執筆者略歴〉
涌井 文晶(わくい・ふみあき) JNNワシントン支局長
2004年TBS入社。政治部と経済部で総理官邸・経済産業省・日本銀行などを担当したほか、「NEWS23」の制作を担当。経済部デスクを経て、2023年4月からワシントン特派員。2025年7月から支局長を務める。

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