「伝えない選択肢はなかった」中国が最も敏感な“人権問題”への向き合い方

中国が特に敏感になっていたのが、人権問題だ。
ウイグル問題や天安門事件後の民主活動家の扱いをめぐり、当時アメリカと中国は激しく対立していた。

外交文書には、中国側から「今この問題をとりあげると首脳会談の雰囲気が気まずいものとなる恐れがあるため、取り上げてほしくない」と事前に伝えられていたことも記されている。

細川氏が選んだのは、公式の会談ではなく晩餐会で伝えるという方法だった。中国側が反発するとしても、人権問題は「当時、世界中が関心を持っていた話題であり、中国に伝えないという選択肢はなかった」と語る。

細川護熙元総理
「一概に西側の民主主義を押し付けることに、私もあまり良い感情を持ってないと。中国も参加したウィーン人権会議宣言にもあるように、人権は人類の普遍的な価値であって、その改善のために各国が努力すべきだと伝えました。アメリカとアジアの言い分の間を取って、ブリッジ役を果たした訳です」

会談後、中国側は「細川総理は人権問題について、李鵬総理の観点と立場を十分理解した」と発表。これに対し、帰国の政府専用機内で記者から真意を問われたという記録も残っている。

当時、中国の人権問題に寄り添う意図があったのか尋ねると、細川氏は「どの国も自分たちに都合よく解釈するんです。そんなことをしないのは、日本くらいです」と苦笑いして答えた。