台湾問題で神経を尖らせた中国 細川総理が語る「対中外交で気をつけた2つのこと」

外務省が作成した訪中資料には、「台湾」という言葉が何度も登場する。

「台湾問題は、一歩対処を誤れば日中関係の根幹を揺るがしかねないデリケートな問題であり、慎重な対応が必要」
「我が国閣僚の訪台、李登輝総統の訪日が実現されれば、はるかに強い反発を示すのは必至」

李登輝氏は台湾出身で初めて総統となり、京都大学農学部に留学した経験を持つ、日本と縁の深い人物だ。当時、中国は李氏が「休暇」と称して東南アジアを訪問したことに強く反発しており、日本訪問への警戒を強めていた。

外交文書には、中国側が日本の事務方に「もし万一リトウキが京都大学の同そう会に出席するため訪日するというようなことがあれば大変なことになる」と発言した記録も残されている。

首脳会談を前に、台湾問題で摩擦が生じないよう神経をとがらせていた日本。そして迎えた李鵬首相との会談について、細川氏はこう語る。

細川護熙元総理
「台湾について特に問題になったっていうことはないですね。中国との外交で気をつけないといけないことって2つだけなんですよ。1つは日中平和条約を遵守しますということ。もう1つは日台関係は、あくまでも非政府間の実務的な関係として維持していきますよということ。この2点は日中の根幹的な関係に関わることなので、そこを間違えて一歩踏み外すようなことがあると日中関係は土台から崩れてしまう」

結果として、台湾問題をめぐる中国側の反発はなく、会談は無事に終了した。そして最も多くの時間が割かれた議題は、意外にも別の問題だった。