「この国にまだ正義はあった」 近藤さんを励ましたもう一人の被害者
社会から突き放されたような孤独の中、転機が訪れる。弁護士の岡村勲さん(故人)が、2000年に立ち上げた全国犯罪被害者の会「あすの会」との出会いだった。
1997年、旧山一証券の代理人だった岡村さんは、逆恨みされた男に妻を殺害されていた。
「被害者にはなんの権利もない、どこからも保護をうけない。裁判には一切関与させてもらえない」(故・岡村勲さん)
その問題意識から、岡村さんは全国各地を歩き回り、被害者の実情を訴えて署名を集め、犯罪被害者等基本法の成立につなげていた。
「私はその姿を見て、この国にまだ正義はあったのだと、私がおかしいと感じたことは間違っていなかったという自信が湧いてきました」
ここから、近藤さんの闘いが始まった。
区議会議員として、自らの経験を基に「あの時あればどんなに良かったか」という支援を一つひとつ形にしていく。
2008年、中野区に犯罪被害者の相談支援窓口が設置された。相談や様々な手続きの付き添いなどが、区の仕事としてできるようになった。
2011年には中野区で「犯罪被害者等緊急生活サポート事業」が実現した。
被害を受けて日常生活が難しくなった人のために、家事、育児、介護などを地域住民が手伝う事業だ。
あの夜に息子が用意してくれた「冷たいご飯」の経験がもとになった。
被害にあって苦しんでいる人に「あなたは一人じゃない。私たち社会がみんなで支える」というメッセージとも言える事業だった。














