容疑者の「孤立」を、思ったとき…
―――兄はいま、笑っているのだろうか。それとも泣いているのだろうか。
そんなことをよく考えるのだという。数日前、伸子さんは1年を振り返ってこう話した。
「当然、写真を見て泣いたりすることもありますし、急に泣きたくなるっていうこともありますけれども、この事件がなかったら、出会わなかった人たちとの出会いがたくさんあった」
大きな悲しみを乗り越えようと、来年も一歩前に進もうとしている伸子さんは、ビル放火殺人事件を通して、答えを”ひとつ”見つけたという。
『悩んでいる人を孤立させない』
ビルに放火して、26人を巻き添えにした、谷本盛雄容疑者も社会から”孤立”していたことが事件後、浮き彫りになった。
会が終わり、伸子さんはこう振り返る。「私は患者さんの声を聞きたいというので参加したんですけれども、今こうやってつながっていることが孤立をなくしていきたいということに繋がっているんじゃないかな」
事件から1年、「痛み」とともに歩んできた伸子さんのまわりには
残された人たちが支えあう新たな「居場所」が着実にできていた。

















