「新年 明けまして おめでとうございます」???

年賀状や新年の挨拶で決まり文句として使われる「新年 明けまして おめでとうございます」

この言葉、その “違和感” に気づいてしまうと、気になって気になっておちおち年も越せなくなります。

議論になるのは “時期の矛盾” です。

例えば「梅雨が明ける」のように、「明ける」には「ある期間が終わる」という意味があります。となると「新年が明ける」では、始まったばかりの新年がすぐに終わってしまうようで、おかしい気がします。

これは誤用なのか?

お尋ねするなら言葉のエキスパート、『三省堂国語辞典』の編纂者として知られる飯間浩明さんに、この言葉の構造について話を聞きました。

明けるのは「去年」じゃないの?

飯間さんは、まず「明けましておめでとう」の「明ける」は「新しい年になる」の意味で、期間の移行を表す言葉だと説明します。では、なぜ「去年が明ける」ではなく「新年が明ける」と言うのでしょうか。

飯間さんは、私たちが普段当たり前に使っている別の表現を例に、そのからくりを説明してくれました。

国語辞典編纂者 飯間浩明さん「これを説明するのに一番わかりやすいのが、『お湯が沸く』という言い方です。水が沸騰してお湯になるのだから、論理的には『水が沸く』と言わなければいけないはずですよね。でも、誰も『水が沸く』とは言いません。『お湯が沸く』と言います」

飯間さんは続けて、「セーターを編む」「ご飯が炊ける」という例を挙げ、「新年が明ける」も同じ理屈だと説明しました。

変化する前(毛糸・コメ・去年)ではなく、変化した後の状態(セーター・ご飯・新年)を問題にしているのです。

飯間さんによると、これは日本語学で『結果目的語(または結果主語)』と呼ばれる語法だといいます。出来上がったものや結果となるものを、あえて目的語や主語にすえる表現方法です。