今年のノーベル化学賞に選ばれた京都大学の北川進特別教授(74)。受賞理由は「MOF」と呼ばれる「金属有機構造体」の開発でした。
MOFは、極めて小さい穴が無数にあいたジャングルジムのような構造で、気体を大量に閉じ込めることができる新たな素材として注目されています。
この、新素材を実用化した企業が京都大学発のスタートアップ「Atomis」です。北川さんは科学顧問を務めています。
Atomis 浅利大介CEO
「“近寄りがたい”のと全く正反対で、気さくに話してくれますし、壁が全然ない。ただのおっちゃんという感じです。分け隔てなくみんなと接してくれる方」
Atomisでは8年前から、MOFの実用化に向け、実験と検証を進めてきました。
Atomis 浅利大介CEO
「大学で作れる量はミリグラム~グラムしか作れなくて、“1キロ=数千万~1億円”というぐらいコストがかかると言われていた。実用化していこうとなると、1キロ=1万円以下にしないといけない」
MOFを作るには高温高圧にすることが必要で、高額の費用がかかっていました。
しかし、苦労の末、2年前に常温常圧で粉末状のものを練り合わせて作れるようになりました。安価で大量生産が可能になったのです。
AtomisのCEO・浅利さんは今回の受賞がMOFの魅力を広めるきっかけになると期待しています。
Atomis 浅利大介CEO
「素材を世の中に出していくって結構大変で、安くならないと使ってくれない。皆さんの興味をMOFにもってもらって、MOFを使いたいというお客さんが増えると、追い風になる」
京都市上京区にある化学メーカー「大原パラヂウム化学」。AtomisのMOFを使って、“ガスの吸着剤”を開発しました。
たばこの吸い殻が入ったビン。
記者
「たばこの吸い殻のかなりきつめのにおいがします」
MOFを用いたガス吸着剤のフィルターを通すと…
記者
「一切、においがしなくなりました。全くしないです、においが」
においのもととなるガスをMOFの穴に閉じ込めたということです。
大原パラヂウム化学 大原正吉 専務取締役
「『においを取りました、終わり』というよりも、例えば工場においても、(有害な)ガスによって作業環境が悪くて人が辞めてしまうとか、課題を弊社の材料で解決することで、より深い社会課題への解決対策にもなるのかなと」
ノーベル化学賞の受賞につながった新素材は大きな可能性を秘めています。
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