トランプ関税とは一体何だったのか

アメリカの「平均実行関税率」は、1年前と比べ大幅に上昇。
▼2024年(予測):2.48%⇒▼25年(予測):16.8%
※24年予測「Tax Foundation」/25年予測「イェール大学」(11月17日時点)

改めて、世界中を振り回した“トランプ関税”の狙いは何だったのだろうかー

『明星大学』教授 細川昌彦さん:
「最初から“関税収入”が一番大事だと思ってやり始めたわけではなく、やはりトランプ大統領自身の思い。『同盟国を含めてみんな長年アメリカを食い物にしてきた』『アメリカが犠牲になってきた』という根深い思いがあって、関税をかけるぞという脅しのもとに取り戻していこうと。関税はそのための手段」

――当初、関税の本命は中国で、戦略的に中国を強くしないためだと。しかし結局は同盟国の方が割を食っていると思っていたが、最初から同盟国も狙いに入っていた

細川さん:
「同盟国であれ中国であれ、全く関係なく同列で並べて考えているだけであって、交渉しやすい相手、取りやすい国から取っていく。それで最後の大物が中国。ただし、これから先の米中間での戦いが“関税ではないフィールド”になっているという点は、他の国との根本的な違い」

米中関税対立「アメリカ“ベタ折れ”」

トランプ大統領は、最大の貿易赤字国である中国に対し高い関税をかけ、その後激しい関税の応酬が繰り広げられた。

その過程で、アメリカにとって最も重要だったのが、中国が輸出している「レアアース」をめぐる問題だ。

中国は10月上旬に「レアアースの輸出規制強化」を発表。
これに反発したトランプ氏は、中国製品に「100%の追加関税」を課すと表明した。

結局、10月30日の米中首脳会談で、中国はレアアースの輸出規制強化を1年延期し、アメリカは追加関税を取り下げることで合意。

▼アメリカ:中国への追加関税20%▼中国:米国への関税10%となっている。

『明星大学』教授 細川昌彦さん:
「用意周到の習近平VS場当たりのトランプで、アメリカの“ベタ折れ”。習近平主席が用意周到にずっと準備してきた結果で、輸出管理という手段を使って、これまでも重要鉱物を順番に規制していって、最後にレアアースという武器まで振り出した」

中国の“レアアース戦略”は、すでに5年前から始まっている。

<中国の重要鉱物・レアアース輸出規制>
▼2020年12月⇒輸出管理法制定
▼2023年
・8月⇒ガリウム・ゲルマニウム
・10月⇒アンチモン(超硬材料)
・12月⇒グラファイト(黒鉛)
▼2025年
・2月⇒タングステン・インジウム・モリブデン
・4月⇒“7種のレアアース”(ジスプロシウムなど)
・10月⇒“5種のレアアース”(ホルミウムなど)・磁石などレアアース関連品目(0.1%以上、中国技術)の「再輸出規制」

細川さん:
「米中首脳会談で、25年10月のレアアース規制は1年延長となったが、それ以前の輸出規制は全部残ったまま。トランプ政権はあたかもレアアース規制が全部なくなったかのように成果としてアピールしているが全くのデタラメ。輸出許可の制度をちょっと緩和しますよと言われて、それなら事実上の撤廃みたいなものだとホワイトハウスが勝手にそうアナウンスした。最も素人のような発想」