年明けの通常国会は解散含みの展開に

今後の政治の展開を考えてみよう。

臨時国会はガソリンの暫定税率廃止の法律や補正予算を成立させて閉幕し、12月後半には26年度予算案が編成される。防衛費の増額や物価高対策の経費などが盛り込まれるが、税制や社会保障の抜本改革には時間的な余裕がないため一部の手直しだけとなる。物価高にあえぐ庶民にとっては暮らし向きが良くなる流れは見えてこない。

年明けの1月下旬には通常国会が召集され、150日間の審議が始まる。自民、維新の連立政権は、衆院では少数会派を取り込んでギリギリ過半数を確保。一方で、参院では少数与党のままだ。予算委員会での審議などは紛糾が予想される。閣僚の不祥事や失言などがあれば、さらに国会は混乱するだろう。

高市総理は自民党総裁選を勝ち抜き、国会での総理に指名されたが、衆院選での民意を受けて発足したわけではない。石破茂前総理、岸田文雄元総理がいずれも総裁選直後の衆院選を経て内閣を発足させたのとは大きな違いである。

野党側が「国民の信を問え」と迫ることは確実で、高市総理がどの段階で解散・総選挙に踏み切るかが焦点となる。

自民党にとっては、連立から離脱した公明党・創価学会との協力が見込めない選挙となる。25年の参院選で躍進した参政党は衆院選でも多くの候補を擁立する構えで、自民党を支持してきた保守地盤が切り崩される可能性がある。

自民党にとっては、裏金問題で失った信頼の回復や物価高対策を含む政策力の向上などが大きな課題だ。

メディアの役割

高市政権の発足を受けて、世論調査では「初の女性総理」を支持する声が多かった。トランプ大統領との日米首脳会談では、高市総理が「偉大な同盟」「黄金時代」などと自賛し、新聞やテレビも大きく報じた。

だが、米国が一方的に15%の関税を課し、米国への80兆円の投資を強要されるのが「偉大な同盟」とは言えないだろう。メディアは外交の実像を観察し、的確に評価しなければならないが、今回の日米首脳会談ではそうした構図を描く作業は十分ではなかった。

台湾有事にからむ高市総理の国会答弁をめぐっても、メディアは経緯を丁寧に解説し、問題点を指摘する必要があるのだが、中には総理を追及した野党議員を批判する論調も出ている。「権力を監視する」というメディアの役割を果たしているとは言えない。

初の女性総理の誕生で、メディアの真価も問われている。

〈執筆者略歴〉
星 浩(ほし・ひろし)
1955年、福島県生まれ。
79年に朝日新聞入社、85年から政治部。総理官邸、自民党、外務省などを担当。ワシントン特派員、特別編集委員などを歴任。
2004-06年、東京大学大学院特任教授。
16年に退社し、TBSへ。「NEWS23」キャスターやコメンテーターを務める。
著書に『自民党幹事長』(筑摩書房)、『官房長官 側近の政治学』『永田町政治の興亡』(いずれも朝日選書)など。

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。