将棋AI同士の対局を誰も見ない理由
岩井:私は、その気づきが非常に大事なことだと思うんです。AIがものづくりをすることにおいて、いつも論点になるのは「AIがどれぐらい人間に近いものを作れるか」ということばかりな気がしているんですよ。
それももちろん大事なんですが、私はいつも論点が一つ欠けていると感じています。それは「受け手がどう思うか」ということです。受け手は、人間に近ければそれで良いのか、好きになれるのか。その観点があまり議論されていない気がします。
例えば、将棋のAIは非常に強いですが、将棋AI対将棋AIの対局を誰も見ようとはしないですよね。人々は強い将棋を見たいのではなく、苦しみながら人と人が戦っているところを見たいんです。小説も同じで、綺麗な、うまい小説ではなく、その書き手の人間性や偏りのようなものを皆が楽しんで読んでいる。だからこそ人間が書くということがすごく大事なのだと思っています。
野村:なるほど。
岩井:「AI野村」の話も、受け手がそれを聞いてどう思うだろうか、という視点がもしかしたら少し欠けていたのかもしれません。皆、そもそも「AIがやっています」という付箋が1つ付いただけで、見方がだいぶ違ってしまうのではないでしょうか。














