優勝を左右するかもしれない2、4、6区
今の女子長距離界において、主要区間で大きなリードを奪うことができるのは、4年連続区間賞中の五島莉乃(28、資生堂)と、東京世界陸上10000m6位の廣中くらいだろう。主要区間がベテラン勢になっても、若手になっても、積水化学が大きくリードすることは難しい。主要区間で上位の流れに乗ることが最重要ではあるが、優勝するには2、4、6区がカギを握る。
2区が世界陸上代表だった山本や木村なら、積水化学はトップに立つ展開が見込める。そして今年は入社2年目の道下美槻(24)でも、同じレベルの走りが期待できる。道下は日本選手権4位の1500mが専門だが、今季は5000mでも15分25秒85と自己記録を30秒以上も更新した。駅伝への出場意欲は昨年から示していたが、今年はより現実的になっている。
他の選手は全員が10km区間も想定して練習しているが、道下だけは2区と4区に絞っている。2区なら区間賞を、インターナショナル区間の4区なら外国勢と小差の走りが求められる。「昨年は自分も走れず準優勝で終わってしまい、すごく悔しい気持ちが残っています。今年こそ自分が出走して優勝を達成したい。そして来年も2連覇すると、強く思っています」
ベテランの森も今年に懸ける思いは強い。昨年はアンカーの6区で、優勝した日本郵政と1秒差の2位でタスキを受けた。最初の1kmを2分55秒で飛ばして先行したが、逆転を許してしまった。普段は明るい森が、「なかなか立ち直れませんでした。悔しいというひと言では片付けられません」と真顔で語る。
今回出場すれば10回目となり、来年は6人のメンバー入りは目指さないという。今季は本職の3000m障害を走らず、1500mと5000m、9分00秒59の自己新を出した3000mを走ってきた。
「年齢によるケガのリスクも考えて、今年は3000m障害を走らない選択をしました。クイーンズ駅伝では20年も、5区の自分が逆転されて2位だったことがあります。駅伝で良い思いを何度もさせてもらってきましたが、悔しい思いもしてきました。最後に悔しさを全部晴らすような走りをしたいですね」
今年もアンカーなら“最後の駅伝”という気持ちを持って、しかし昨年の反省も含めて冷静な走りをするだろう。
そして優勝の行方を左右するかもしれない選手が佐々木梨七(23)である。21年は6区区間2位の走りで優勝テープを切り、翌22年は同じ6区で区間賞。23年は4区で外国勢と小差の区間7位で、1位をキープして優勝に貢献した。昨年は代表経験者たちが好調で気持ちで引いてしまったところもあり、メンバー入りができなかった。
「去年走れなかったので、今年は走りたい思いが強いんです。10kmの区間もあると監督から言われていて、今年は疲れていても、ジョグの量を減らしすぎないように意識してきました。他にも自分たち下の世代が引っ張ったり、ラスト1本は飛び出したりして、積極的に練習してきています。自分が外れても、“頑張ってきた選手が選ばれた”と思える練習をみんなでしてきました」
野口監督は「2、4、6区でアドバンテージを取りたい。佐々木はポテンシャルがあり、個人的には一番期待している」と話す。
21年と23年の優勝はどちらも3区で佐藤がトップに立ち、5区の新谷がダメを押すレース展開だった。今年の積水化学は主要区間のメンバーも、レース展開もそのときとは違う勝ち方を目指す。メンバーの大半が日本代表を目指すなど、選手個々が強力な積水化学だからこそ、その勝ち方を目指すことができる。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

















