「助けてくれる人が思い浮かばず、ひとりぼっちだった」。“老老介護”の末、102歳の母親を殺害した罪に問われた71歳の娘に懲役3年、執行猶予5年の判決が言い渡されました。

小峰陽子 被告
「事件の5年前くらいから、ご飯を食べたばかりなのにご飯はまだ?と尋ねてきたり、私の言っていることを理解しなかったり。助けてくれる人が思い浮かばず、ひとりぼっちになったような気持ちでした」

法廷の証言台で絞り出すように話した小峰陽子被告(71)。去年7月、東京・国立市の自宅で102歳の母親・フクさんの首を絞めるなどして殺害した罪に問われています。

裁判で明らかになったのは“老老介護”の現実でした。

小峰被告は2012年から母親と同居し、介護を1人で担っていました。母親は認知症の症状が出始めましたが、福祉サービスを利用しながら日々過ごしていたといいます。それが、事件の1週間ほど前に急転します。

小峰陽子 被告
「母は自力で移動できなくなり、10分おきにトイレに行きたいと言うようになりました。私が抱きかかえて連れて行きました」

母親のその求めは、70歳を過ぎた小峰被告の身体に重くのしかかりました。

小峰陽子 被告
「腰が痛くなってきて、母を運べなくなりました。オムツに用を足すよう説明しても母は理解できず、ケアマネージャーに施設に入れたいと頼みました」

小峰被告は介護施設を訪れて母親が入所する準備を整えましたが、事件はその翌日に起きました。

7月22日午前4時ごろ、物音で目を覚ました小峰被告はベッドから転落した母親を発見します。

小峰陽子 被告
「誰かに助けてもらおうと119番通報をしました」
弁護人
「その時の対応は」
小峰陽子 被告
「『今回は向かいますが、本来の仕事ではないので、次からはかけないで』と言われました」
弁護人
「どう思ったか」
小峰陽子 被告
「次はどうすればいいんだろう、誰に助けを求めればいいんだろうと憂鬱な気持ちになりました。自分一人しかいない、ひとりぼっちになったような気持ちでした」

思い詰めた小峰被告。「もう、殺すしかない」と直後に母親の首に手をかけました。

検察側が小峰被告に懲役8年を求刑し、迎えたきょうの判決。

裁判長
「12年間の介護負担は決して軽いものではなく、事件と切り離してみるべきではない」

東京地裁立川支部は「動機・経緯に同情の余地が大きい」として、小峰被告に懲役3年・執行猶予5年の判決を言い渡しました。

小峰被告は「はい、わかりました」とだけ答え、法廷を後にしました。