続投していたら公明党の政権離脱は防げたか?
――高市氏が総裁になった際に、公明党が高市氏に「外国人政策」について注文をつけるという場面がありました。石破さんが続投していたらそうしたことはなかったと思いますか?
少なくとも、「寛容と協調」といったことはもっと言ったと思いますね。もちろん犯罪を犯す、日本のルールを守らないなどは決していいことではないんですが、外国人の方が日本に来るときに、かなり難解な日本語をどうやって理解をしてもらうか、あるいは宗教観が違うなかで社会における同調性は難しいところがある。
台湾や韓国の給料が高いなかで、日本を選んでもらおうと思ったら、日本語や日本の文化を日本の負担において会得してもらうってことも私は必要なことだったと思ってますし、これから先もそうだと思います。
――公明党が連立政権を離脱しましたが、石破さんが続投していたら防げたのでしょうか?
どうでしょうね。(公明党の)斉藤代表が「石破政権だったら離脱しなかった」と言っていたと新聞の見出しになっていましたが、全部お話を聞いたわけではないので軽々な判断はできません。
ただ、外国人政策にしても「政治とカネ」にしても、例えば企業団体献金を「廃止しろ」という話ですが、世の中は自然人と法人で成り立っています。自然人は18歳から投票権があるけど、法人には投票権がないので、社会の構成員たる法人がいかにして意思を表明するかというと、それは企業団体献金なのでしょう。
ただ、どの企業が誰にいくら出したか、ある議員はどこからいくらもらっていたか、という透明性を上げていかないと、有権者の分からないところで企業・団体が政治を支配しかねない。ですから、「禁止よりも公開」ということを私はずっと言ってきましたのは、法人の企業・団体献金の社会におかえる影響力行使をどう考えますかっていう根本論なんです。全然うけないですけどね、この議論。
自民党のそういう団体の数が7000くらいあって「多いじゃないか」と言われるけれども、全国に1720ぐらい市町村があり、そこにひとつずつ自民党の支部があるので、そんなにおかしなことではない。
また我々の党籍をもっている地方議員さん、都道府県会議員さんに限っても、何千人といるわけでしょう。そういう方々が都道府県単位で一本化しますということになると、仮に千代田区の自民党にお金を使ってほしくて献金したのに、東京都連で分配するとなると自分の意思と違うということが起こってしまう。
そうするとやはり大事なのは公開性であり、ひょっとしたら上限規制は検討の余地があったかもしれません。やっぱり「禁止より公開」っていうのはずいぶん我々は心がけてきました。
高市氏の台湾有事めぐる発言「政府が断定することは歴代政権は避けてきた」
――高市総理が台湾有事をめぐって「存立危機事態」と発言しました。これは歴代総理の見解を逸脱しているとの指摘もありますが、どう思われますか?(リスナーからの質問)
それは「台湾有事は日本有事だ」と言っているのにかなり近い話になります。個々のケースを想定して、「この場合は存立危機事態だ」「この場合は防衛出動だ」というのはその時々の状況によって違います。歴代政権は「こういう場合は日本有事である」と限定してきませんでした。
たとえでいえば、私が(防衛庁)長官時代にイラクに自衛隊を派遣しました。もちろん武力行使で出たわけじゃなく、戦闘が終わっているのだから、そこでやったのは人道支援です。ただ、そこに出た日本の自衛隊の部隊そのものを狙って、国または国に準ずる組織が武力攻撃をかけてきたら、それは法的には日本有事ということがありえますよねという話はするんだけど。
じゃあ朝鮮半島において、あるいは中国は内政問題だと言っている台湾の問題について、政府が「この場合はこうだ」と断定することは、歴代政権は避けてきたことだと思っています。
抑止力を高めるために何ができるかを全部言っちゃったら、抑止力にも何もなりません。我々の政権のときに自衛官の処遇改善しましょうねと言ったのは、今、定数が1割足りず、募集しても半分しか来ない。どんなに立派な船や飛行機を持っても、人がいなかったらどうにもならない。抑止力の高め方というのは、一つ一つ地道にやっていくことで、「こういう事態はこうです」と決めつけることは、あまり抑止力の向上にはつながらないのではないでしょうか。
生活保護「本来持っている機能を十分に果たせているか」
――生活保護基準引き下げが違法との最高裁判決が出ました。国への損害賠償請求は棄却するという判決も出ましたが、厚労省の対応についてご意見を伺いたいです。(リスナーからの質問)
国家賠償の対象となるかどうかは、個々の事案によるのだろうと思っています。法律論として、いかなる権利の侵害になり、いかなる賠償の対象になるかは、お一人お一人の事案に即して考えていかなければいけないことでしょう。
最低賃金と生活保護の関係って難しい話なんだけれども、最低賃金の近くで暮らしてらっしゃる方が約700万人おられるわけで、それは生存権の問題にも関わってくると思っています。お一人お一人が暮らしていける水準なのかは、今の物価動向も勘案しながら見ていかなければいけません。
可能であれば就労機会をどう作っていくか、働きたいのに働けない方にどういう手当てをしていくべきか。生活保護そのものを否定するような考え方の人はおそらくいないと思うんだけれども、生活保護が本来持っている機能を十分に果たせているか、という検証は必要でしょうね。
――個々人の救済を個々人で求めると、線引きから必ず振り落とされる方がいます。どこかで政治判断として救済や解決が必要になると思いますが、いかがですか?
政治判断というのはそういうものです。
――長生炭鉱の潜水調査や遺骨収容について、民間任せの現状をどうお考えですか? 国はどう関わりますか?(リスナーからの質問)
技術的に可能であれば、国がやるべきものでしょう。国としてやるからには、携わる人の安全が確保されるかどうかが大前提になります。安全が確保されるということであれば、国の関与は当然認められるべきものだったと思っています。
――安全かどうかの現地調査が最低限できるということですか?
それはどういう手法によって安全が確保されるか、安全だと判断をして仮に事故でも起こったらどうしますか、ということですから、国が関わるからには、安全の確保は最優先されるべきものです。
(TBSラジオ『荻上チキ・Session』2025年11月13日放送「石破茂前総理がスタジオ生出演 政治とカネ、戦後80年所感…在任1年を問う」より)














