自民党籍ながら参政党の全面バックアップを受けた「地上戦」

村井氏との大接戦を演じた新人、和田政宗氏は東京都出身の51歳。元NHKアナウンサーで、2013年に政治家に転身し、参議院議員を2期12年務めたあと、今年夏の参院選で落選した。

この夏まで自民党の国会議員だった和田氏は、今でも自民党籍を持っている。そんな和田氏は市民団体からの要請を受ける形で知事選への出馬を決めた。

その後、公開討論会などを通じて参政党との関係を深め、政策の覚書を締結。内容は、村井県政が推進した政策への対抗を明確に示すものだった。具体的には、「水道の再公営化」「移民反対」「土葬の不許可」などだ。

この覚書を結んだ当初、参政党は「和田氏への推薦など組織的な支援を行うものではない」とした。しかし、その言葉とは裏腹に、参政党による和田氏への応援は、極めて盛大なものだった。

選挙期間中とその直前を含めると、党の神谷宗幣代表が和田氏の応援演説をした回数は実に5回。さらに党の有力議員らが続々仙台入りし、連日熱心な街頭活動を行った。歩道にごった返す1000人近い聴衆が、議員らの一挙手一投足を見逃すまいとするその熱気には、私も驚きを禁じ得なかった。

和田候補(左)と参政党・神谷代表(右) 仙台市内 10月19日

神谷代表は何度目かの応援演説で、「和田氏には公認以上の支援をしている」と公言したほか、和田氏が未だ自民党員であるにもかかわらず、「自民党から抜けられて良かった」とも発言した。

和田氏も聴衆に対し「オレンジ色(注・参政党のイメージカラー)のスカーフを身に着けてくれてありがとう」と感謝を述べるなど、その光景はもはや「参政党の選挙」そのものにしか見えなかった。

大接戦の裏には、こうした参政党による和田氏への強力な「地上戦」の支援が一定の効果を発揮したのは間違いない。

しかし、今回の選挙戦で村井陣営を最も苦しめたのは、ネット空間で展開された“見えない敵”との「空中戦」の方だ。