人とクマの暮らすエリアを“線引き”

 全国各地でクマによる被害が相次ぐ中、問題解決のヒントになるかもしれない取り組みがあります。

 山々に囲まれた長野県箕輪町では去年、クマの目撃情報が例年の約4倍に急増し、住民がクマに襲われる被害も発生しました。そこで今年6月に、人とクマが出あわないような環境をつくるため、“ゾーニング”という新たな取り組みを開始。クマが暮らす場所と人が暮らす場所を“線引き”して、その中間を緩衝地域とするのです。

 川沿いの林「河畔林」など、山を下りてきたクマの多くが通る緩衝地域を、次のように整備して対策しています。

 ▽ヤブを切り、クマが身を隠せない“居心地の悪い場所”に
 ▽人の生活圏との境目には場所によって電気柵を設置
 ▽草刈りをして、実のなる木もできるだけ伐採

 今年8月に撮影された映像には、クマが緩衝地域から人の生活エリアに出てきたものの、すぐに林に戻っていく様子が映っていました。

 町によりますと、ゾーニングを始めて以来、クマの目撃情報は去年の19件から9件に減り、人が襲われる被害は0件になったということです。

 大西氏はこのゾーニングについて、「関西では有効かもしれない」とした一方、「すでにクマが増えてしまった東北だと手遅れかもしれない」と指摘。一番の解決は、個体数を減らすことだといいます。

 クマの目撃情報が増えている京都府の農村振興課にも対策を聞いたところ、自治体に委託された猟師が駆除するほか、猟師の高齢化や減少の中、狩猟免許を取得した人に支援金を出す自治体もあるそうです。

 予測不能な事態の中で、警察官や自衛隊、猟師などが命がけで取り組んでいるクマ問題。ひとりひとりが当事者意識を持って考える必要がありそうです。

(2025年11月5日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)