取材記者が解説 複雑な制度と過大受給の悪質性

 複雑な給付金の仕組みや、今回の事案の悪質性についてMBS・原田康史記者に聞きました。

 (原田康史記者)「今回取材をしたフレンチレストラン『ル・クロ・ド・マリアージュ』ではプロの力を生かして本物の場所でしっかりと指導と支援をもらいながら障がい者が自分のペースで成長していくという、A型事業所の新しい可能性に挑戦しているのが印象的でした。また障がいのあるスタッフたちが仲間たちと本当に生き生きと働いている姿がありました」

「一方で、『絆ホールディングス』ではデータ入力や自己学習など就労の実態がほとんどなかったという声が利用者さんから聞かれ、今回はお金の問題だけではなく、障がいのある人に必要な支援が行われていなかったという意味でも、非常に悪質な事案かと思っております」

「取材によりますと、大体1事業所当たり200人以上の障がいがある人を囲い込んでいるような形で、その約60~70人ほどがA型利用としての雇用契約。残りの人たちが一般的な雇用契約を結んでいて、この2つを約半年おきに切り替えることを繰り返すことで、A型利用から一般就労に移った際に加算がカウントされていく。絆ホールディングスのある事業所では年間の加算の人数が200人前後だったということです」

 「そうすると翌年度、この事業所への加算金は1人1日約21万円。この事業所は1日あたり43人ほどが働いているというような利用申請をしていますので、年間の延べ人数は1万5868人。21万円×1万5868人で約33億円もの加算金を得ていたのではないかと見られています」


―――「A型利用」から「一般就労」への切り替えを繰り返すことで加算を増やし、1年間でなんと約33億円を得ていたとみられる。どのような経緯で発覚したのでしょうか?

 (原田康史記者)「以前は、同じ利用者を重複してカウントすることについて、それがすぐにルール違反ということではありませんでした。ただ、2024年度から厚生労働省のルールが厳しくなり、3年以内に同じ利用者を重複してカウントすることは駄目となりました。この事業者は厳しくなった以降も繰り返していたのではないかという疑惑が出ていて、大阪市も調査に乗り出したとみられます」

 「一般的な企業で働くことが難しい人が、A型事業所で支援を受けながら、しっかりと労働をして賃金を稼いでいくというのが制度の趣旨ですので、そこでスキルアップしてようやく一般就労になると。ここは本来、一定のハードルがあるもので、制度自体もこんなに多くの人が移行するということは想定していなかった。ある意味ルールの抜け道をつかれた形かなと思います」

―――3年以内に同じ利用者で申請することはもう原則認められていないので、これに関していろいろな疑義が生じているということですね。

 (原田康史記者)「約33億円が全て過大請求というわけではなくて、このうち3年以内の重複があった分については過大請求になるおそれがあるということで、実態調査が進んでいます」

 多額の税金が投入されている給付金の制度。事業者には透明性がある説明が求められます。

(2025年11月4日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特命取材班スクープ』より)