宇宙線によって表面が“日焼け?”

研究者チームは、この異常な二酸化炭素濃度と、比較的高い一酸化炭素濃度などの特徴から、3I/ATLASの表面が「銀河宇宙線(GCR)」を長年浴び続けたことで、組成が変化したと結論づけています。

ちょうど厚い皮に覆われた果物のように、表面と中身の二層に分かれているというのです。

「3I/ATLAS」の外殻と内部の模式図“Interstellar Comet 3I/ATLAS: Evidence for Galactic Cosmic Ray Processing”より Romain Maggiolo, Frederik Dhooghe,Guillaume P. Gronoff, Johan de Keyser, Gael Cessateur

「3I/ATLAS」を“日焼け”状態にした銀河宇宙線とは?

銀河宇宙線(GCR)は、超新星爆発などで発生する陽子やヘリウム原子核などの高エネルギー粒子で、光速に近い速度で宇宙空間を飛び回っています。

研究チームは、この銀河宇宙線が、「3I/ATLAS」の外側の層の性質を、数十億年かけて変えたと考えています。

具体的には、銀河宇宙線が、「3I/ATLAS」にもともとあった「一酸化炭素の氷」を、「二酸化炭素の氷」へと化学的に変えてしまったため、表面が二酸化炭素の氷で覆われた状態になったと分析しています。

表面を覆う「二酸化炭素の氷の殻」は、厚さ約15m~20m に及ぶと考えられています。「3I/ATLAS」が太陽に接近し、二酸化炭素の氷が温められ、ガスとして放出されたため、大量の二酸化炭素が観測された」と結論付けています。

この分析は、水や二酸化炭素などの氷の混合物に、銀河宇宙線に似た高エネルギー粒子を当てた実験データと、3I/ATLASの表面に当たった銀河宇宙線をシミュレーションした結果が一致したことで裏付けられています。