届かない支援の壁 行政がSOSに気づけないワケ

こうした事件は後を絶ちません。

介護をめぐる殺人事件は、2023年までの10年間で、全国で少なくとも424件あり、死者は432人に上ります。(日本福祉大学・湯原悦子教授による集計)

男性は事件前、福祉サービスを受けようと、何度も自治体に相談していましたが、支援には至りませんでした。母親自身が支援を拒否したからです。

男性(62)
「最後の最後まで車いすも使わないし、杖もつかない。とにかく人に恥を見せるなと」

専門家は、こうしたケースは珍しくなく、行政が危険に気づくのは困難だと話します。

日本福祉大学 湯原悦子教授
「いわゆる介護殺人の事例として出てくるものは、死の直前まで別に虐待していない。そういう事例に関しては、普通は支援者も安心していますし、行政は関わりませんという状況です」

湯原教授は、「介護をされる側だけでなく、介護をする側への支援制度の充実が必要だ」と指摘します。

日本福祉大学 湯原悦子教授
「心身の状況から、その方の人生の悩み、金銭的なものから、本当は仕事したかったが辞めざるを得なかったとか。介護殺人も防ぐためには、介護者支援の制度を構築していくこと、充実していくことがすごく重要だと考えています」