10月21日、自民党の高市早苗総裁が第104代内閣総理大臣に指名され、女性初の総理誕生となりました。また、新総理誕生に伴って組閣も発表。高市新政権のゆくえや新閣僚の顔ぶれについて、高市氏と同郷で長く自民党と対峙してきた立憲民主党の辻元清美参議院議員に話を聞きました。
大臣だけでなく「副大臣」「政務官」に女性がどれだけ登用されるか
10月21日に行われた総理大臣指名選挙。衆議院では決選投票とはならず、1回目の投票で237票と過半数を超える票を獲得し、高市早苗氏が新総理に指名されました。まずは新内閣の大臣の顔ぶれが出そろう前に、長らく自民党と論戦を交わし続けてきた立憲民主党・辻元清美氏に総理指名選挙直後の雑感を聞きました。
―――日本で初めて女性の総理大臣が誕生しましたが、率直にどのような印象でしょうか?
(立憲民主党 辻元清美参院議員)「よかったなと思っています。高市氏のようなたたき上げの人がサラブレッドを破って総理大臣になった。女性が総理になったことで国会の風景も変わると思うので、そこは良かったと思います。ただこれからです。男も女も関係ないと思いますし、これからは何をするかということです」
―――高市氏から以前、多くの女性を閣僚に登用したいとの発言がありましたが、どのように感じますか?
(辻元清美議員)「女性の閣僚は5人というのが過去最高でしたから、それ以上の数を入れたいというような話も聞いています。ただ一方で、副大臣や政務官にも女性をどれだけ入れられるかということなんです。女性のキャリアを積むという意味では、副大臣にも政務官にも女性を登用することによって現場を踏んでいくということが大事ですので、そこにも注目してます」
辻元氏「高市新総理は根性があって勉強家」
奈良県出身の高市新総理は1993年に衆院選で初当選。当選10回で、目標とする政治家はイギリスの元首相で“鉄の女”とも呼ばれたマーガレット・サッチャー氏です。
―――高市新総理のことをどのように見ていますか?
(辻元清美議員)「国会答弁なども一生懸命自分でしようとするタイプで、根性があって勉強家です。ただ、これほど執念がある人なんだと思わず驚きました。高市氏は今回、『何が何でも総理大臣になってやる』というような発言をしていました。本当に鬼気迫る形相で言っているのを見て、彼女の執念の力で総理の座を掴み取ったのかなと、ポジティブにも評価しながら思いました」
辻元氏は高市氏と同じ奈良県出身。高市氏の3年後、1996年の衆院選で初当選しました。2人は政党は違えど同郷の女性議員で、政治経験の大部分が重なっています。直接連絡を取り合うことがあるのか問われると…
(辻元清美議員)「最近はありませんが、2回目の総裁選(2024年に挑戦し、決選投票で石破氏に敗れた)で疲れ果てていたみたいで、ばったり会ったときに、『清美ちゃんしんどいね』って言うから、『そらあんたしんどいやろ』と(笑)」
高市氏へのシンパシーを感じさせるようなエピソードもありつつ、総理としての高市氏への期待について問われると、野党議員として辻元氏はこのように話しました。
(辻元清美議員)「いま日本では…世界中でもそうですが、移民排斥や戦争で社会が分断し対立でギスギスしていると思います。私は日本の中でそういったイデオロギーのぶつかり合いの対立や分断の国にこの国をしてはならないと思うんです。高市さんはどちらかというと右派からの期待も大きい。しかし、それを前面に出したら国が分断される可能性があると思います。考え方やイデオロギーが違っても、お互いの存在を尊重しながら議論する、政策の違いで勝負するというように心がけてほしいなと思っています」
“保守”でありながら一国の総理としてバランスを取ることが出来るか
―――高市新総理は本当に思想信条から“ゴリゴリ”の保守なのでしょうか?
(辻元清美議員)「人間なのでいろんな考え方がありますから…ただし保守的な人たちに支持されてここまできているので、その人たちの期待を裏切るようなことはできないとがんじがらめになってるのではないかと。あれだけ『靖国神社に行く』とずっと言ってきたのに今年は参拝しませんでした。一国を統治するわけですからやはり総理大臣になったらバランスを取らないといけない。自分のイデオロギーなどを国民に押し付けるということは控えないといけないわけです。それは右派であろうと左派であろうと同じだと思います」
「私はここが高市新総理が一番試されているところだと思います。イタリアのメローニ首相は極右と言われているところから出てきた首相ですが、首相になったらやはり現実的にならなければいけないということで、非常にバランスをとった政策を遂行しているようです」
今後の政権運営への懸念――自民と維新の連立合意文書は「議論をすっ飛ばしている」「自民党内からもそういう声」
政権運営におけるバランスを心配する辻元氏。懸念しているのは、高市氏が総理選出の前段で日本維新の会と連立を組むにあたり交わした合意文書の内容です。
(辻元清美議員)「これから高市新総理は何をするのか。そこで私が心配なのは、自民党と維新との合意文書がありましたけれども、この中に自民党よりも右派色が強いような安全保障政策であったり憲法の考え方というのをが入っていますので、維新に引っ張られるような形で、高市新総理がさらに右傾化していくと、私は政権は長持ちしないと思います」
―――逆にその維新が自民党に取り込まれるのではないかというような話もよく聞きますが、そのあたりのバランスをどう見ていますか?
(辻元清美議員)「取り込まれようが取り込まれまいが、それについてはあまり関心ありませんが、何をするか。両党の合意書を見ると、12項目の政策と言われていますが、さらに細かく見ると55項目あって、例えば安全保障を見ると、『安保の基本政策である戦略3文書を改定する』とあります。大臣も出していない、要するに内閣に入らない閣外協力の人たちの文書で合意してしまっていいのかと。専守防衛を逸脱するような兵器を購入しようというような話も入っている」
維新の会が“絶対条件”として提示した議員定数削減については、かつて立憲民主党の前身・民主党も積極的だった経緯がありますが…
(辻元清美議員)「議員定数の削減と言っていますが、これは何も議員の覚悟を示すとかそういう話ではなくて、何人ぐらいの議員で、どんな選挙制度だったら、国民の声を国会にしっかり届けることができるか、そのルールの話なんです。衆議院と参議院で議会制度協議会というのがあって、参議院は議長のもとで、議員制度や何人でどれぐらい、どんな制度がいいかと各党全て入って議論をしています。そんなことをすっ飛ばして、急に50議席比例で削減するんだと吉村代表は力説していますが、今までの議会のルールを無視して勝手に何を言っているのかと自民党の中ですら、そういう声が出てきているんです」
新内閣の顔ぶれ発表 女性の入閣は2人で辻元氏「がっかり」
辻元氏が番組に生出演している最中、高市新内閣の顔ぶれが発表されました。
総務大臣:林芳正氏
法務大臣:平口洋氏
外務大臣:茂木敏充氏
財務大臣:片山さつき氏
文部科学大臣:松本洋平氏
厚生労働大臣:上野賢一郎氏
農林水産大臣:鈴木憲和氏
経済産業大臣:赤沢亮正氏
国土交通大臣:金子恭之氏
環境大臣:石原宏高氏
防衛大臣:小泉進次郎氏
官房長官:木原稔氏
デジタル大臣:松本尚氏
復興大臣:牧野京夫氏
国家公安委員長:赤間二郎氏
こども政策担当大臣:黄川田仁志氏
成長戦略担当大臣:城内実氏
経済安全保障大臣:小野田紀美氏
注目されていた女性閣僚は、片山氏と小野田氏の2人のみにとどまりました。
―――発表された新内閣の顔ぶれを見た印象は?
(辻元清美議員)「がっかりしました。6人ぐらいは女性を入れるのではと言われていたのに、ここでリーダーシップを発揮して欲しかったですね。結局、以前から“第2次麻生政権”になるのではと言われていましたが、どこに『高市カラー』が出ているのかがさっぱりわかりません」
―――この顔ぶれには期待する、このポストは違うのでは?などありますか?
(辻元清美議員)「私が懸念したのは、女性が総理になってトップに立ったとしても、いちごのショートケーキと言っていますが、イチゴの部分を女性にしても、土台の部分は男性の権力闘争、派閥均衡というような政治になってしまえば本当の意味での多くの女性たちが『女性が総理になったこと』に期待していることと違う形になってしまいます。今のところ、男性の支配の上に神輿として乗せられるのかしらという印象です」
「国民が不審に思っていることは未解決。総理の足元も危うい」
総理指名と組閣を経て、次は高市新政権が臨む国会論戦が始まります。
(武田一顕氏)「来週、再来週ぐらいからおそらく始まる予算委員会での攻め手というのは、自民や維新の政策の部分もあると思いますが、もう一つ、どうしても予算委員会になると、スキャンダル的な部分に注目が集まります。何か立憲民主党としての攻め手みたいなものは持っていますか?」
(辻元清美議員)「やはり高市政権が一体何をしたいのかと、基本的姿勢を最初の予算委員会では聞くということじゃないでしょうか。高市さんは、本当に女性初の総理の座をつかむために割合無理したと思います。石破前総理はパーシャル=部分ごとに、いろんな野党の意見も聞きながら、公開の場で熟議していこうという姿勢を見せた政権でした。しかし高市新総理と維新のこの合意は、熟議と公開どころか勝手にどこかで決めたもので、それを振りかざされて、こういう政治をするんだと言われても承服しかねます」
「また、自民と維新を足しても衆参とも過半数には届かないので、高市政権は一体何をしたいのかということを一つずつ問いただしていくこと。それと、現在のような政治の混乱に陥った原因は『政治とカネ』の問題です。参議院の常任委員長という非常に重要なポストに自民党はケロッと、裏金議員をつけてきています。企業・団体献金の問題など、今まで国民が不審に思っていることに決着もつけずに、そしてさらに議会を無視しているような合意をして、数を合わせて何とか総理の座を掴んだけど足元は非常に危ういと思います」