「また無くなるのでは…」と今年も“買い占め”

農水省の発表によると、9月末時点で2025年のコメの予想収穫量は、24年より68万5000トン多い「747万7000トン」。2017年以降で過去最高となる見込みだ。

小泉農水相(10日)
「収穫量・作付面積・民間在庫量のいずれにおいても近年で最大の水準」

稲刈りの最盛期を迎えた埼玉県吉川市の農家『吉川受託協会』でも、「出来はまあまあ良い。“24年の3~4倍は獲れている”」と話す。

24年の不作から一転、農家からも豊作を実感する声が聞かれるが、その一方で…

『吉川受託協会』日暮美明さん
「25年はコメ自体は足りているんだろうけど、『また無くなるのではないか』ととりあえず“買い占めている”みたいな人もいると聞いたことはある。生産者から直接買ったほうが飲食店の人にとっては安く手に入る。ラーメン屋さんをやっている人とか毎週来る」

コメ卸業者によると、2025年に埼玉県のJAが生産者に払った概算金(コメの前払い金)は「60kgあたり3万1500円」で、24年より1万円ほど高くなっているとのこと。

日暮さんのところでは、業者から「3万2000円」ほどを提示されたという。

日暮さん
「1円でも高く買ってもらえるなら、やはり高く買い取ってくれるところに売りたい。うちも後継者がいないと困るけど、今までの状態では子どもに『うちの会社で働け』とは言えない。売り上げも随分少なかったので」

――今だと「農家になれ」と言える?

日暮さん
「この状態が何年か続けば、間違いなく良いほうにはいくと思う」

田植え前から「コメ確保」競争過熱

農家にとっては価格上昇は収入増、そして経営の安定化につながるという期待もあるが、この高値はいつまで続くのだろうかー

コメ卸売『ナカムラ米販』中村貞昭さん
「年内は新米人気もあるので、値段的にはそんなには安くならない。ただ、小売や業者は売れないと困るので、特売攻勢をかけたり売り上げを維持しようとする動きがあると思う。“年明けは値段が下がるような動き”が出てくると思う」

高値が続くコメの価格について、専門家は市場の“過熱感”を指摘する。

『東京大学』大学院 特任教授 鈴木宣弘さん
「25年の収穫量は24年よりも1割ぐらいは増えるのではということで、市場においてはコメは十分にあるという情報の方が強くなってきている。ただ、25年も猛暑の影響で非常に不作になるのではと心配され、3月のまだ“田植えの前の段階”で、25年秋のコメを“非常に高い値段”でいろんな業者が農家に直接買いに来ていた。『何とかコメを確保したい』という“競争が非常に過熱した”結果が今の状況」