無人冷凍餃子店が失速した真の理由
これら市場全体の活況を踏まえると、無人冷凍餃子店の失速は「冷凍食品」というカテゴリーの問題ではなく、そのビジネスモデル自体に課題があったことが明らかになります。
失速の最大の理由は、圧倒的な価格競争力の欠如です。消費者は、近所のスーパーで「大阪王将」のような有名店の冷凍餃子を、無人店のほぼ半額で購入できました。「餃子の雪松」のブランド力では、この価格差を正当化できなかったのです。
加えて、商品の単一性も致命的でした。冷凍食品市場が「ロイヤルホスト デリ」のグルメ惣菜や「ナッシュ」の健康弁当など、多様な選択肢で溢れる中、餃子1種類だけでは消費者を惹きつけ続けることは困難でした。さらに、現金のみ・お釣りなしという不便な決済方法はキャッシュレス化の潮流から取り残され、利便性を求める現代の消費者から敬遠される一因となりました。
無人冷凍餃子店は、コロナ禍の「非接触」という一時的な追い風に乗ったものの、価格、品揃え、利便性、そしてブランド力という、食品ビジネスにおける普遍的な競争力に課題を抱えていたのです。
成功する無人販売「ど冷えもん」との決定的違い
一方で、同じ「無人販売」という業態で成功を収めているのが、冷凍食品自動販売機「ど冷えもん」です。この自販機は、無人餃子店が抱えていた課題をことごとくクリアしています。
まず、多様な商品ラインナップが可能です。餃子専門店のように単一商品に縛られず、ラーメンやピザ、カレー、さらにはケーキといったスイーツまで、設置する店舗が自由に商品を選べます。これにより、消費者の多様なニーズに応えることができます。
次に、決済方法の柔軟性です。現金だけでなく、多様なキャッシュレス決済にも対応しており、現代の消費者の購買スタイルに合致しています。
さらに、この自販機はプラットフォームとして機能するため、すでに地域で人気の飲食店や有名ブランドが自社の商品を販売するツールとして活用できます。つまり、無人冷凍餃子チェーン店が持てなかった強力なブランド力を、既存のプレイヤーを巻き込むことで補っているのです。
累計販売台数1万台という実績は、無人販売というビジネスモデルそのものではなく、消費者のニーズをいかに満たすかという柔軟性こそが成功の鍵であることを示しています。