「10代」や「親世代」にも観てほしい

――この映画、こういう人たちに特に観てほしいというのはありますか?

森井 実は10代の人とかにも多く観ていただきたくて。「自分たちがこの先こうなってたらどうしよう」とか、当たり前に親がいて、当たり前に指導してくれる人がいることの幸せをちょっとでも感じてくれたらいいなというのも思います。

かつ、何でこういう若者が生まれてきてしまうのかというのを考えてもらうとか、なるべく疎ましいものと思わず、何かその彼らにも、否応なくこうなった事情があるのかもしれないって思う人が増えるだけでも少しは変わるのかなと思っています。

永田 私は当初、子供がいる親の立場の人に観てほしいと思って作り始めたんです。大学生や就職する年代の子供を持つ方が周りに多いのですが、自分の子は大丈夫と思っていることがほとんどだと思います。

子供たちにもそれなりの教育を与えてあげられる友人が多いのですが、「子供っていうのは、親が思っている以上に不安定でいつどんな方法で道をそれちゃうかわからない」危うさがあるっていうことを観て知って欲しいなと思っています。

――一方で、この映画は日本以外にも向けていると伺っています。テーマ選びも含めて世界を意識されて作られたということでしょうか。

森井 そうですね。正直、国内で起きている問題など日本の実情を、日本人よりも海外の人の方が実は知っていたりするところもあるのかと思います。

貧困含めて世界中で同じ問題を抱えていたりするじゃないですか。でも日本だけが、「日本は良い国」だと、国内の実情に目を背けているようなところを疑問に思っていて。だから内部からそういう映画を作り、国外から見ても共感できるものなんじゃないかなというところで、やってしかるべきかなと思いました。 

THE SEVENが今後目指すところ

――今回は初の劇場映画ということでしたが、THE SEVENとして、今後どんな作品づくりを目指していかれますか?

森井 グローバルでヒットを狙うドラマシリーズや映画を作って、国内外で成功させるのは、もちろん当たり前の目標なんですけども。

自分たちでしっかり実績を作っていくことで、こちらから売り込まなくても、先方から「ぜひうちでやりませんか」「うちで撮ってほしい」と指名してもらえるような存在になりたいです。

原作がない、僕らが1から作ったオリジナル企画だとしても、「THE SEVENが作ったんなら、きっと面白いだろう」「間違いない」と期待されるようになりたいと思っています。

――先日、TBSとU-NEXT、THE SEVENの3社が初めてタッグを組んだプロジェクトが発表されました。人気コミックを実写化した『ちるらん 新撰組鎮魂歌』(主演:山田裕貴)が来年春に放送・配信されるとのことですが、どんな作品ですか?

森井 現代でやるのにふさわしい内容なんですよ。明治維新前夜の大変革期で、世の中が否応なしに流れていって今まで普通だったことが普通じゃなくなる時代に生きた人たち。その中で、「自分はこうだ」「自分はこうしたい」「自分はこうなってやる」というふうに思った人たちの話なんですね。そんな登場人物を通して、何か視聴者が力をもらえるような内容を目指して作っている作品です。

(聞き手 「調査情報デジタル」編集部)

【株式会社THE SEVEN】
TBSホールディングスが出資して、2022年1月に設立。
世界に向けた日本初の革新的なエンターテインメントコンテンツを創造していくことを目指すプロデュース集団を標榜する。
同年11月にはNetflixと戦略的提携を締結。Netflixシリーズ「幽☆遊☆白書」(2023年12月~)、「今際の国のアリス」(2020年12月~、最新作シーズン3は2025年9月~)が世界配信されている。

〈森井 輝(もりい・あきら)氏の略歴〉
THE SEVEN 取締役副社長 / チーフコンテンツオフィサー (CCO)・プロデューサー
1995年『幻の光』を皮切りに『キッズ・リターン』『血と骨』など多くの映画制作に従事。2009年株式会社ロボットに入社し『MOZU』(国際エミー賞にノミネート)など数々のシリーズヒットコンテンツをプロデュースする。2020年には自ら企画した『今際の国のアリス』が全世界配信され、日本以外にも韓国・タイ・フランス・ドイツほか多くの国で視聴回数TOP10入りを果たす。2025年9月から配信開始の『今際の国のアリス』シーズン3は、Netflixグローバル週間1位(非英語シリーズ)、シーズンすべてがTOP10入りする成績を収めた。2022年8月よりTHE SEVEN所属。

〈永田 琴(ながた・こと)監督の略歴〉
大阪府出身。関西学院大学商学部卒業後、岩井俊二監督をはじめ数々の撮影現場で助監督経験を経て、2004年にオムニバス映画『恋文日和』で劇場公開デビュー。以降、映画『渋谷区円山町』(06)、『Little DJ~小さな恋の物語』(07)、『全員、片想い』(16)、WOWOWドラマ東野圭吾「分身」(12)、「変身」(14)、「片想い」(17)、テレビドラマ「イタズラなKiss Love in TOKYO」(13/フジテレビTWO)、配信ドラマ「東京ラブストーリー」(20/FOD・Amazon Prime Video)、ドラマ「ライオンのおやつ」(21/NHK BSプレミアム)などを手掛ける。

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。