SNSの時代、「加工」と知りつつ憧れる矛盾

SNSは若い世代の「やせ志向」を加速させる大きな要因の一つである。InstagramやTikTokには、加工によって細く仕上げられた体や磨き上げられた肌の女性たちの姿があふれている。たとえ現実離れした画像であっても、子どもや若者はそれを「理想」として受け止めやすく、理想の体型に近づこうとするプレッシャーが高まっている。

ある調査では、多くの女子学生が「画像は加工されている」と理解しているにもかかわらず、「それでもそうなりたい」と憧れを抱き、現実とのギャップに苦しんでいることが示されている。つまり、情報リテラシーを持っていても、憧れや欲望の力の前では十分な防波堤にならないのだ。

さらに、SNS上での「いいね」やフォロワー数といった評価軸は、ユーザーの外見への意識や行動に影響を及ぼしている。私自身が「やせ」に関する投稿を検索した際も、アルゴリズムは「ダイエット方法」や「シンデレラ体重」といった情報を次々に提示してきた。このようにSNSの仕組みそのものに、繰り返し「理想像」を提示して「やせ志向」へと導いてしまう構造的な問題が潜んでいる。

もっとも、SNSに登場する理想像は突如現れたものではない。幼少期から人形やキャラクターを通じて「細く長い体型」が理想と刷り込まれてきた可能性がある。近年の研究(Nature, 2023)では、やせ型の人形に触れることが、幼い子どものボディイメージや自己肯定感を低下させることが報告されている。

この点はバービー人形をめぐっても議論がなされ、社会的な批判を受ける中で、現在では車いすや多様な体型、さらには糖尿病患者をモデルにした人形へと展開するなど、多様化が進められている。

しかしながら、日本のアニメやSNSで拡散されるキャラクター像は依然として細長い体型が主流である。こうした文化的背景がSNSで拡散される「理想像」と重なり合い、子どもたちの「やせ志向」を一層強めているのではないだろうか。