親のダイエット文化が家庭に与える影響

家庭もまた、子どもの「やせ願望」を形づくる重要な場になっている。私たちが行った若年女性の調査では、BMI25未満で「やせ願望」をもつ人の約50%が、体型に関して本人にとって不快なコメントを受けた経験があることがわかった(BMI18.5~25未満は「普通体重」とされる)。

特に、「母親」からの発言が最も多く、次いで兄弟、父親の順であった。つまり、身近な家族からの言葉が強く影響しているのである。

さらに、小学生を対象とした調査では、子ども自身が「太っている」と感じていなくても、親が「ダイエットした方がいい」と勧めたり、親自身が日常的にダイエットをしている場合、その子どもがダイエット行動をとる割合が高いことが明らかになった。親の何気ない一言や日常的な態度が、子どもの体型認識や行動に直結している可能性があるのである。

この背景には、日本社会に根強く存在する「女性は細くあるべき」という暗黙の規範があるのではないだろうか。親自身もまたその価値観に縛られてきた世代であり、無意識のうちに子どもへ受け継いでしまう。

つまり、家庭という本来安心できる場が、「やせなければならない」という無言の圧力を再生産し、同調圧力として子どもに作用している可能性がある。親の言葉や態度が、子どもに「周囲に合わせなければならない」という感覚を強め、体型や食行動に影響していると考えられる。