日本の若い女性の「やせ率」は世界でも突出している。小学生のうちから「やせたい」と考え、ダイエットを行う例も少なくない。その背景には、SNS上に氾濫する「理想的な体型」の画像、家庭内の価値観、「細いことが美しい」という社会概念がある。しかしそこには様々な健康リスクが存在する。順天堂大学国際教養学部の吉澤裕世准教授(グローバルヘルスサービス領域)による考察。

日本の若年女性、突出する「やせ率」という現実

日本の若年女性は「やせ」の割合が国際的に突出している。2023年の国民健康・栄養調査によれば、20~30歳代女性のうち20.2%がBMI18.5未満であり、過去10年で最も高い水準に達した。(BMIは体重と身長から算出される肥満度を表す指数。18.5未満が低体重<やせ型>とされる)

OECD諸国と比べても、この「やせ率」は異例の高さである。しばしば、「小学校から人気のあるK-POPアイドルを輩出している韓国の方がやせ率は高いのではないか」と思われがちだ。しかし実際には、日本の方が韓国よりもやせ率が高い。

欧米で「肥満の増加」が社会課題とされているのとは対照的に、日本では「やせ」が深刻な健康問題となっているのである。特に高校生から大学生、そして新社会人へと移行する年代は、美意識の形成や外見への関心が高まる時期に当たる。周囲の目を気にして無理な食事制限を行うケースも少なくない。

2024年に医学誌 The Lancet に掲載された国際共同研究によれば、1990年から2022年の間にやせの割合は多くの国で減少傾向を示した。しかし、その中で日本は例外的に成人女性の「やせ率」が増加した数少ない国のひとつとして報告された。

世界200以上の国と地域を対象とした大規模解析の中で、日本が際立った特徴を示したことは、単なる個人の問題ではなく、我が国の社会や文化に根差した構造的な課題があることを強く示唆している。

さらに、私たちが行った小学生を対象とした調査では、1年生の段階ですでに男子の約25%、女子の約35%が「やせたい」と答えていた。学年が上がるにつれその割合は増加し、6年生になると男子約30%、女子では約50%に達した。特に6年生女児の約3割は、実際にダイエットを行っていたのである。

つまり「やせたい子ども」という現象は、個人の問題にとどまらず、日本社会全体が向かうべき重要な課題ではないだろうか。