スタジオで『ドンカマもらえますか』

作業はコルグの森原由多加さん(60)と内山紗由美さん(37)が中心となって進めましたが、当初は電源すら入らない状態。「そもそも資料が何も残っていなかった。壊してはまずいと、少し直しては、必ず通常動作するかの確認の繰り返し」(内山さん)、「一度、基板部分を分解すると元に戻せないような気がして触れられなかった」(森原さん)と、まさに悪戦苦闘の連続だったといいます。

修復作業は約7か月をかけて完了。真空管とトランジスタを使い、回転盤でリズムを制御する機械的な要素が強い「ドンカマチック」の修復は、技術者たちにとってまさに大きな挑戦となりました。

発表会に招かれた元カシオペアのキーボーディスト・向谷実さん(68)は、中学1年生の頃からエレクトーンと小型のリズムマシンをつなげて演奏していた経験を持つといいます。「今でもスタジオで『すいません、ドンカマもらえますか』って言っている。日本の多くのミュージシャンがこのドンカマに育てられたのかなと思っている」と語りました。