「日本のためのリズム楽器」
向谷さんは、鍵盤楽器奏者にとってリズムマシンの重要性を強調。「キーボードは『ダウンストローク』だけ。ギターやドラムと違って上下の動きがないので、リズム感が弱くなりがち。『ドンカマ』があることで、16分音符の裏とか、8分音符の裏とか的確にキープできる。演奏が走ってしまったり、もたってしまったりするのを補正してくれる」と説明。会場では、こちらも3年前に修復されたヤマハ初のエレクトーン「D-1」と「ドンカマ」を組み合わせて『イパネマの娘』を披露し、見事、往年の名機の音色が蘇りました。

今回の修復プロジェクトは、単に古い楽器を直すだけでなく、日本の音楽文化の歴史を保存する重要な意味を持っています。三枝さんは「ドドンパは日本のために作ったリズム、音頭も昔からあるもの。『ドンカマ』は日本のためのリズム楽器」と胸を張ります。
1959年誕生の「D-1」と1963年完成の「ドンカマ」。戦後間もない時期に生まれたの2つの電子楽器が、日本の音楽教育と音楽産業の発展に大きく貢献してきたことは間違いありません。「表現を豊かにするために生まれたのがD-1、音楽を支える礎になったのがドンカマ。この時代の魂が今の私たちに宿っている」と向谷さん。黎明期の日本の電子楽器が持つ独自性と創造性は、60年以上経った今でも生き続けています。