戦後80年プロジェクト「つなぐ、つながる」です。志願して戦争へ行った石川県の男性が戦後帰還したところ、自分は戦死したことになっていました。そんな男性が情熱を傾けたのは、国の特別天然記念物トキの保護活動でした。

石川県羽咋市に住む村本義雄さん(100)。

国の特別天然記念物・トキがかつて生息していたこのまちで、半世紀以上にわたり中国と共同での保護活動に心血を注ぎ、両国の架け橋となってきました。

村本義雄さん
「パッと広げたら、羽の裏が真っ赤になってお日様に輝くとぴかっと光る。わ~きれいな鳥やと。トキを大好きになった」

その村本さんにもかつて、戦禍を乗り越えた過去があります。

村本義雄さん
「村の徴兵検査。(村で)一番若かったんです、18歳」

幼い頃から学校で繰り返し教えられてきたのは「国のために命を捧げよ」という言葉。戦時中、まだ徴兵年齢にも満たない18歳で軍隊に入ることを志願しました。

村本義雄さん
「私は軍人に行かないと、日本は大変な目に遭うということが、子どもの頃から(分かっていた)」

しかし、戦地・インドシナ半島で、それまでの日本の教育が間違いであったことに気がつきます。

村本さんが目の当たりにしたのは兵士として雇われた現地住民の多くの遺体。

村本義雄さん
「半分腐ってるみたいな自分の家族を見つけてね、遺族がそれに抱きついて泣いとる姿を見ました。戦争って何てひでえ。なんぼ敵やからといっても、かわいそうやなと思った」

終戦の翌年に自宅へ戻ると信じがたい光景が、仏壇には自分の写真が飾られていました。

村本義雄さん
「戦死した知らせがもうすでに入っていて。『ああ、わしは死んだことになっとるな』と。私は生き返ったことになるんだよ。死んだ者が生きているんですから」

一度は死んだ自分と、かつて絶滅した野生のトキの存在を重ね合わせる村本さん。戦争の経験こそが、トキへの思いを強くした原点だと話します。

ふるさと・羽咋市では早ければ来年6月、本州で初めてトキが放鳥されることになりました。

村本義雄さん
「せっかくトキの世界に踏み込んだんですから、せめて羽咋の上空をトキが飛ぶ、それを見て天寿を全うしたい」