東京出身の視聴者から寄せられた「鳥刺し」についての疑問、「どうして鳥を刺身で食べられるの?」です。

鳥刺しについての疑問を寄せてくださったのは、家族の転勤で鹿児島に住むようになった東京出身の女性(48)です。

「鹿児島では当たり前のようですが、なぜ鳥を刺身で食べられるんですか?鹿児島に越してきて、本当に良かったと感じるのは、美味しい刺身や魚と鳥刺しを食べている時です。よほど新鮮なのでしょうか?」

新鮮な鶏のムネ肉やモモ肉をしょうゆにつけて食べる鳥刺し。
肉の旨みが口いっぱいに広がる、鹿児島県民のソウルフードです。

スーパーでも購入できます

鶏の肉を刺身で食べるのは、鹿児島と、宮崎の一部でしかみられない独特の食文化とされています。

(レポーター)「まちのみなさんは「鳥刺し」についてどう感じているのか聞きました」


「Qよく食べます?はい。皮がついているのよりも、柔らかいほうが好き。」
「Qみなさん食べる?夫が食べます。」


「福岡出身者:鳥を生で食べる文化がなかったので、すごい新鮮でした。美味しいと思います。うまみも強いし」
「Q鹿児島はなぜこのように食べるか知ってる?え~知らない。知らないです」

なぜ鶏を刺身で食べるのか?ヒントを求めて調べていると、鳥刺しの歴史が見えてきました。

県養鶏協会が1985年にまとめた鹿児島県養鶏史には、開聞町郷土誌の江戸時代の記録として、「行事には、鶏がつぶされササミは刺身となり」と書かれています。鳥刺しは少なくとも江戸時代から食べられてきたのです。


(鹿児島女子短期大学 福司山エツ子名誉教授)「鶏を飼っている家がいっぱい。みなさんそうだったから。お客様が見えると、おそばとぼた餅と、鳥刺しと、鶏の煮物と、鶏のお吸い物と、そういうものがあったら、最高のおもてなしだったわけです。」


鹿児島の食文化に詳しい鹿児島女子短期大学名誉教授の福司山エツ子さんです。昔は祝い事や来客があると、家々で飼っていた鶏をさばいてもてなしていました。しかし、生の肉は、焼いたり煮たりしたものに比べ、細菌が増えやすいはずですが、どうして刺身で食べられたのでしょうか?


福司山さんの考えるポイントは、さばく過程で熱湯をかけたり、表面を焼いたりすることです。この過程で、完全な「生」ではなく、いわゆる「タタキ」の状態になり、肉の表面の殺菌まで自然と行われていたのではと見ています。

(福司山名誉教授)「熱湯と産毛を取る焼き方を徹底していたのではないか。さばきの過程において、生といえば生の状態。だから刺しというんでしょうかね。焼くという工程なしに鳥刺しとはいえません。」

家々で料理していた江戸時代はそれでよくても、今の衛生基準はどうなっているのでしょうか?


実は、1998年に国は生食用の牛肉と馬肉について処理方法や殺菌などの衛生基準を定めました。しかし、南九州独自の鶏肉の生食には基準が設けられなかったため、県は2000年に独自に基準を作りました。

包丁やまな板は83℃以上のお湯で殺菌し専用のものを使うことや食中毒を防止するため、解体方法や肉表面の殺菌、温度管理などを定めています。


(県生活衛生課 下島浩幸食品衛生専門監 ※取材時)「食文化である、生食用食鳥肉その安全を確保するためにはガイドラインをよく周知するということと、それに基づく指導を継続していくということが必要と考えています。」

ただ、食中毒には細心の注意が必要です。
こちらは全国で起きたカンピロバクターという菌による食中毒の発生件数です。


鶏肉以外のものも含まれますが、年間300件あまりで推移しています。
全国では、半生や加熱が不十分な鶏肉料理で、カンピロバクターによる食中毒が多発していて、飲食店で本来「加熱用」の鶏肉を生で提供したケースもあったといいます。

県内では、この5年間にカンピロバクターの食中毒が13件発生し、鳥刺しが原因だったものも1件ありました。

こうしたことから、鳥刺しの安全性を更に高めようと、民間で飲食店や加工業者向けの資格が作られました。それが「鳥刺しマイスター」です。